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世界初リサイクル紙おむつ 焼却炉がない町から商品化へ、鹿児島

The So Recycle Center, where used diaper materials are cleaned and disinfected, Osaki Town, Kagoshima Prefecture, October 13 (© Sankei by Sayaka Kimura).

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使用済みの紙おむつを新しい紙おむつに再生する世界初の試みが、鹿児島県東部の町を舞台に進んでいる。介護が必要な高齢者の増加に伴って大人用紙おむつの需要は増えており、廃棄物排出量に占める紙おむつの割合は2030(令和12)年には7%台に達する見通し。自治体と協定を締結、実証実験を進めるユニ・チャーム(東京)は、世界初のリサイクル紙おむつの商品化を目指している。

取り組みが進められているのは、鹿児島県志布志市と同県大崎町。2市町には焼却炉がないため、平成2年に共同の処分場を建設、すべてのごみを埋め立ててきた。だが、ごみの増加により15年間は使える見通しだった処分場が想定より早く満杯になると判明したため、10年にリサイクル推進で処分場の延命を図る方向にかじを切った。

現在、2市町ではごみを27品目に分別回収。うち25品目は全てリサイクルされている。大崎町のリサイクル率は30年度に83・1%を達成、14回「日本一」に輝いている。全国平均は20%(令和2年度)だから、その差は圧倒的だ。

そんな徹底したリサイクルを進めても埋め立てるしかないごみのうち、単一品目で最も多いのが紙おむつ。埋め立てごみの約2割を占めるといい、高齢化が進む中でさらなる増加も見込まれる。リサイクルの可能性を模索する中、技術開発を進めていたユニ・チャームと志布志市が平成28年に協定を締結。30年には大崎町も参加し、使用済み紙おむつの分別回収とリサイクルの実証実験が始まった。

ユニ・チャームが試作した再生紙おむつ。見た目、使用感とも従来品と変わりないという(同社提供)

回収された使用済み紙おむつは、大崎町内の「そおリサイクルセンター」内にある実証実験施設で粉砕、洗浄して素材を分離。オゾンで減菌・漂白・脱臭処理などを行い、同社の施設で再び製品化する。特許も取得した同社の処理技術により、リサイクル素材からの細菌類は「検出限界以下」で衛生面は完璧。すでに2市町内の介護施設などで試用を重ね、商品化のめどもたっているという。

紙おむつのリサイクルには世界各国のメーカーなども取り組んでいるが、建築資材や固形燃料など別素材への再生にとどまり、リサイクル前と同じ商品に再生する「水平リサイクル」は世界初。2市町では現在、紙おむつの分別回収は任意だが、本格実施に踏み切れば、大崎町のリサイクル率は95%を達成する見通しだ。

大崎町住民課の松元昭二課長は「リサイクルの町として世界にも貢献する取り組みを進めていきたい」と話している。

高齢化で「大人用おむつ」ごみ増

高齢化に伴い大人用紙おむつの利用が増えることを踏まえ、環境省は令和2年、紙おむつ再生利用などに関するガイドラインを作成。同省の調査では、自治体の24%はリサイクルを「実施したい」と回答しており、ごみ削減に向けてリサイクルの意向は強まっている。

ユニ・チャームによると、少子高齢化で国内のおむつ市場は子供用が縮小する一方、大人用は平成27年に年間69億枚だったのが、15年後の令和12年には96億枚と、約1・4倍に増大する見通し。環境省の推計では、同年度に紙おむつ全体の処理量は245万~261万トンとなり、平成27年度比で2~3割増と大きく増える見込みだ。

同社は東京都町田市でも、使用済み紙おむつの効率的な分別回収に向けた実証実験を実施済み。さまざまな地域の実情にあわせたリサイクル推進を目指している。

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