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政府は12月22日、脱炭素社会への転換に向けた道筋を検討する「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」を開き、GX実現に向けた今後10年間のロードマップ(工程表)を含む基本方針を取りまとめた。原発の60年を超えた運転を認めるルールの新設など足元のエネルギー安定供給に向けた対策と、企業の二酸化炭素(CO2)の排出に負担を求める「カーボンプライシング(CP)」の導入が2本柱で、日本の産業・エネルギー政策の大転換を目指す。
岸田文雄首相はこの日の会議で「GXは経済社会全体の大変革で、技術進歩や各国の取り組み次第で状況は変わる」と述べ、今後も柔軟に見直しを続けていく考えを示した。国民から意見募集をした上で閣議決定し、原子炉等規制法など関係法令の改正案を来年の通常国会に提出する。
工程表では原子力について、安定供給と脱炭素化の両立に向け「重要な役割を担う」と明記。既存の原発を最大限活用するため原則40年、最長60年という運転期間のルールは、東京電力福島第1原発事故後の審査対応などで停止した期間を除外し、60年を超える運転延長を可能にすることとした。また、持続的な原子力の活用のため、原発の建て替えにも踏み込み、廃炉が決まった原発を対象に次世代型原発に建て替える方針も示した。
もう一つの柱のCPは、電力会社や石油元売りなど化石燃料の輸入事業者に、取扱量などに応じて支払いを求める「賦課金」と、企業が削減した排出量を売買する「排出量取引制度」の2つの仕組みを令和8年度から段階的に導入する。
政府は32(2050)年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする目標を掲げており、実現には今後10年間で官民合わせて150兆円の投資が必要になると試算。そこで政府は20兆円規模の「GX経済移行債(仮称)」を発行することで民間の投資を後押しし、償還財源にはCPで得た資金を充てる。
政府はGXを単なる脱炭素だけでなく、日本経済を再び成長軌道に乗せる好機と捉え、脱炭素と経済の両立を目指す考え。
筆者:蕎麦谷里志(産経新聞)
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