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長野・飯綱東高原、ゴルフ場をグランピングに変貌 SDGsに配慮した新しいリゾートの形に

A fantasy-like view of the snowy winter glamping grounds (Photo courtesy of GLAMPROOK Iizuna Kogen).

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高い山々に囲まれた長野県飯綱町にある飯綱東高原。人気のスキースポットだったが、レジャーの多様化などでスキー客が減少、いいづなリゾートスキー場は経営危機に陥った。そこで、町は指定管理者制度を廃止して完全民営化。民間企業がスキー場と併設しているゴルフ場をグランピングに生まれ変わらせ、環境に配慮したリゾート地にするため、チャレンジしている。

駅から近いリゾート地

長野県北部にある飯綱町の飯綱東高原へは、北陸新幹線長野駅から車で約30分。近づくと、真っ白な幾つものドームが目に飛び込んできた。緑の敷地に設置されたドーム型のテントは青空にくっきりと映える。「GLAMPROOK飯綱高原」だ。

コンセプトは「大自然の中で、あなただけの優雅なひと時を過ごす」。キャンプ道具などいらず、大自然の中、快適なラグジュアリーホテルで過ごすような時間をテントで満喫することができる。

グランピングを全国展開しているグランピングジャパンが提供するツインドーム型テントは広さ42平米。寝室とリビングルームを備え、窓から霊仙寺湖や北信五岳(妙高山、斑尾山、黒姫山 、戸隠山、飯縄山)を望むことができる。

テントにあるシックなベッドルーム(杉浦美香撮影)

「GLAMPROOK飯綱高原」をマネジメントするシルバーバックス・プリンシパルのPR&アドバタイズメントチームマネジャー、村田綾子さんは「冷暖房も完備されており身一つで快適に、都会を離れた非日常を楽しむことができます。周囲に明かりがありませんから、夜は満天の星空を楽しめます」と話す。

温泉で雄大な景色を眺めながらくつろげる(GLAMPROOK飯綱高原提供)

鳥の声も聞こえる。記者が訪れた8月(2022年)は快晴に恵まれ、カブトムシが出迎えてくれた。

夏には、カブトムシ採集もできる(杉浦美香撮影)

実はゴルフ場だった

テントが設営されている約40万平方メートルの敷地は実は、昭和54(1979)年に開場した9ホールある町営のゴルフ場だった。

歴史を振り返ると、ゴルフ場とスキー場、温泉施設は町の第3セクターの飯綱リゾート開発(2009年に解散)が指定管理者として運営していたが、スキー客の減少で経営が厳しくなり撤退。飯綱東高原開発の移管を経て、2018年、投資会社のファースト・パシフィック・キャピタルに売却され、シルバーバックス・プリンシパルがマネジメントすることになった。

ナイトスキーも楽しめる(GLAMPROOK飯綱高原提供)

バブル経済期で全国各地に設立されたゴルフ場は2004年をピークに減少。スキー場も同様に減り続けている。利用客だけでみれば、飯綱東高原の公設のゴルフ場は使用料が廉価だったため一定数の利用客はいたが、スキー場については、設備を維持することが厳しく経営難に陥った。

このため、冬のリゾートとしてスキー場を維持しながら、夏はゴルフをしない家族連れも楽しめるグランピングに変貌、年間を通じて、野外のアクティビティを楽しむ滞在型の観光リゾート施設に生まれ変わることになった。

テント内のリビングルーム。オープンデッキもある(杉浦美香撮影)

ゴルフ場の芝を維持するために必須だった農薬も使用せずにすむため、環境負荷を減らすメリットもあった。

環境に配慮

飯綱東高原の大きな特徴は、官民が一体となり、観光リゾート施設として、SDGs(持続可能な開発目標)を積極的に実践、ゼロカーボンを目指していることだ。

結氷した湖でワカサギ釣りも(GLAMPROOK飯綱高原提供)

まず、取り組んだのがゴミを分別し、生ごみなどの食料残渣(ざんさ)などを微生物の力を借りて発酵させ、堆肥化するコンポストの実証実験だった。実証実験自体は2022年に終了、今年(2023年)春から、新たに生ゴミ処理機を設置して本格的に稼働させる計画だ。3つのR「Reduce, Reuse、Recycle」を行い、SDGs目標12「つくる責任つかう責任」を実践するという。

コンポストの実証実験の様子(杉浦美香撮影)

環境、SDGsについて学ぶ体験学習も実施。霊仙寺湖に植林されたアジサイを維持する剪定に地元の中学生に参加してもらい、摘んだ花のコンポスト化も行った。

まちと一体となった取り組み

飯綱町は、2021年12月にとりまとめた26年までの5年間の第2次総合計画(後期基本計画)で、SDGsに取り組むことを宣言している。特筆すべきは、一つ一つの計画目標をSDGsに照らし合わせていることだ。

共有施設のウッドデッキ。揺れるチェアーで居眠りも可能(杉浦美香撮影)

総合計画の基本理念は「あふれる自然 共に豊かな暮らし創生」。町民にとって、「豊かな自然」は日常のあたりまえの光景だが、地球温暖化による異常気象による災害は他人ごとではない。2019年10月に日本を襲った台風19号は、多くの地点で観測史上の数値を更新する記録的な雨をもたらした。飯綱町では、一大産業であるリンゴなどの農作物が大きな被害を受けた。

気候変動による災害の激じん化は今後も避けられない。町は、そうした災害に備えるために、まず自分たちでできるSDGsに取り組むという。

飯綱東高原の観光の核になっている「GLAMPROOK飯綱高原」「むれ温泉天狗の館」などは今後、町と災害対応のためのパートナーシップを構築する計画だ。

春、桜が満開に咲き誇る絶景が広がる(GLAMPROOK飯綱高原提供)

日野洋一・シルバーバックス・プリンシパルCEOは「これからのリゾート観光は環境に配慮していかなければならない。SDGsの実践は、もはや条件の一つだ。観光を発展させ、人口減少、過疎化に悩む町に働き場所を提供、災害の対応など、町と手を取り合い、環境に配慮した観光リゾートで地方創生に協力したい」と話している。

秋、紅葉の色づきが進むと、冬は目の前だ(GLAMPROOK飯綱高原提供)

峯村勝盛町長は「完全民営化したスキー場、ゴルフ場(現在はグランピング)、日帰り温泉などの指定管理施設による一体的な発展に期待している。町としても計画的な整備、充実を図り、外部の視点を取り入れ観光資源に磨きをかけ、美しい自然や歴史、文化など豊富な資源を活用した本町ならではの体験メニューを充実させ、滞在型の体験交流を促進したい」としている。

公式サイト:GLAMPROOK飯綱高原

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