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雪が降り積もり、まだまだ寒い佐渡島で、トキがクチバシで小枝をはさみ、気に入った相手に渡す求愛行動が確認されている。
「枝渡し」で愛情表現
前回のエッセイで、トキが求愛期に入り、羽の色が黒く変化することを紹介した。自分のはがれおちた皮膚の粉で黒くなったトキが2月に入り、盛んに行っているのが「枝渡し」だ。枝に止まっているときは小枝を折ったり、地面にいるときは落ちている枯れ葉などを気に入った相手に渡す。ペア探しのための行動で、気に入ったらメスは小枝を受け取ってくれる。ペアが決まると、互いに頻繁に枝の受け渡しをするようになる。
しかし、せっかく枝を渡そうとしても、気に入らないと受け取ってもらえない。上の写真は、メスがまだ若くて繁殖期に入っておらず、黒くなっていない。このため、せっかくのオスの求愛も効果がなく、袖にされてしまった。
オスからオスの場合も
枝渡しは、異性同士だけではなくオスからオス、メスからメスと同性同士で渡す場合もある。枝渡しは求愛だけではなく、親愛を示す行動の一つでもあると考えられている。そういう意味で、トキは愛情深い生き物といえるかもしれない。繁殖期ではないシーズンでも枝渡しが観察されることがある。前触れがなく突然始まるため、狙って撮るのは難しい。
小枝の行方は
せっかくプレゼントされた枝だが、渡されても捨てられてしまう。枝に意味があるのではなく、渡して受け取る行為を繰り返しながら愛情を高めるとみられる。
コウノトリは喉元の赤い部分をふくらませ、クチバシを打ち鳴らす。国の特別天然記念物のタンチョウはダンスを舞う。ハトやカッコウ、キツツキ、タカ、インコなど多くの鳥でみられるのは、オスが口移しでエサを渡す給餌だ。鳥の求愛行動はさまざまだ。
トキに話を戻す。メスの背にオスが乗って交尾にいたらない「擬交尾」を何度も繰り返した後、ペアとなり繁殖を始めることになる。このとき、「コオオ、コオオ」と独特の声を出し、頭を震わせてクチバシをカチカチ当てあう。人間でいうところのデートでのおしゃべりだろうか。真剣なデートを何度も繰り返し、結婚にいたる。
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大山文兄(おおやま・ふみえ)産経新聞社写真報道局で新聞協会賞を2回受賞。新聞社時代に11年間にわたり、トキの野生復帰を取材。2020年に退社して佐渡島に移住、農業に従事しながら、トキをはじめとする動物の写真を撮り続けている。映像記者として佐渡の魅力を発信中。インスタグラムでフォローしてください。
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