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丸紅、昆虫飼料でブリの養殖に成功 15日までレストランで提供 新ジャンルに

Yellowtail raised by Marubeni using insect-based feed (Photo courtesy of Marubeni)

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丸紅が栄養価の高い昆虫を使った養殖魚向け飼料を開発し、この昆虫飼料を与えたブリの養殖に成功した。養殖魚ではマダイで成功したケースはあるがブリでは初めてという。2月に少量で出荷し、イタリアンレストランの協力の下、ブリを使った料理の提供を始めた。消費者に味などを確かめてもらうのが目的で、一定の評価を得られれば、販路開拓を本格化させる。養殖ブリの新たなジャンルとして需要を掘り起こし、昆虫飼料事業の拡大につなげる。

高騰する魚粉の代替

昆虫飼料は、先端技術を使って食材などを人工的に生み出す「フードテック」の一種。昆虫から余分な油を抽出したり、乾燥させたりするなどしてつくる。養殖も広まり安定調達できるため、特に原料となるイワシの漁獲量が低下し、高騰している「魚粉」の代替飼料として注目されている。

丸紅はこれを商機ととらえ、昨年3月にフランスの昆虫養殖スタートアップ(新興企業)「インセクト」と提携し、日本の養殖魚に合った昆虫飼料の開発に着手。製造は丸紅子会社の日清丸紅飼料が担い、インセクトが育てた高タンパクの「ミールワーム」という昆虫の幼虫から飼料をつくることに成功した。

丸紅子会社の日清丸紅飼料が養殖ブリ向けに製造したペレット状の昆虫飼料(同社提供)

タンパク質含有量や製法など詳細は非公開。九州のブリ養殖場で2年魚を対象に昨年11月から今年2月の水揚げまでの一定期間、ペレット状に固めた昆虫飼料を与えたところ、通常飼料で育てたブリと比較しても遜色なく成長した。丸紅が投与先にブリを選んだのは、国内養殖魚の漁獲量のうちブリが約半数を占めており、魚粉の使用量も多く、代替需要が大きいと判断したからだ。

丸紅は昆虫飼料を与えるブリを九州で養殖している(同社提供)

もっとも、代替飼料として養殖業者に広めるためには昆虫飼料で育てたブリの認知度を上げる必要がある。現状では、昆虫飼料で養殖した魚に対してイメージだけで敬遠する消費者や小売業者もいる。

スーパーなど販路開拓

そこで、丸紅は心理的なハードルを下げるためにもイタリアンレストランでブリ料理の提供を開始。レストランは東京・大手町の丸紅本社ビル3階に入居する「ヴェルテラッツァ」で、ブリのトマトソースパスタ(1280円)を15日まで提供する。期間限定とはいえ消費者の反応がよければスーパーやデパートなどで話を聞いてもらいやすくなる。今後、食後の評価の分析を行い消費者からおおむね好評を得たことが正確に把握できれば、店舗へのブリのサンプル提供を始める。さらに食のイベントにも出店して消費者認知を高め、販路開拓に力を入れる方針。

レストラン「ヴェルテラッツァ」の昆虫飼料で養殖したブリのトマトソースパスタ(同社提供)
レストラン「ヴェルテラッツァ」では2月はブリのカルパッチョも提供していた=東京都千代田区(佐藤克史撮影)

穀物油糧部の桑野洋平課長は「天然資源(のイワシ)を持続的に利用していくためには限りがあることに配慮するのが当たり前になる」とし、昆虫飼料で育てたブリがサステナビリティー(持続可能性)に配慮した食材として受け入れられることに期待する。丸紅はブリの1年魚や他の養殖魚にも使用対象を広げて出荷を徐々に増やし、養殖業者の間で昆虫飼料を定着させる。

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