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【主張】マングースの根絶 奄美固有種保全へ朗報だ

The mongoose, an invasive species that the Environment Ministry has declared eradicated on Amami Oshima (courtesy of the Ministry of the Environment)

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鹿児島県の奄美大島で繁殖していた食肉目の哺乳類で、有害な特定外来生物・マングースの根絶を環境省が宣言した。

国の特別天然記念物のアマミノクロウサギなど、マングースに食害されていた固有種保全の朗報だ。

環境省が防除を進めてきた外来種マングース(環境省提供)

快挙だが、根絶には平成5年以来31年間にわたる歳月と人々の多大な労力、さらには約35億円の費用を要した。捕食性の外来生物をむやみに自然界に放つことのツケの大きさを認識しなければならない。

奄美大島に南アジア原産のマングースが導入されたのは今から45年前の昭和54年のことだ。毒蛇のハブなどの駆除が目的だった。機敏なマングースの働きに期待したのだろうが、基礎研究が不足していた。日本に天敵がいない場合、海外産の捕食性動物は猛烈な勢いで繁殖して国内の在来種を食害する。魚類や爬虫(はちゅう)類でも同様だ。

奄美大島のマングースの場合は最初の数十匹が約20年後に1万匹になったと推定されている。だが、ハブは減らなかった。マングースは昼行性なので夜行性のハブを見つける機会が少なかったためらしい。

マングースはハブの代わりにアマミノクロウサギや希少なケナガネズミなどを捕食して増えたのだ。マングースの駆除活動は平成5年から始まった。その後、環境庁(現在の環境省)が活動を本格化させ、さらに同17年にマングースを外来生物法の特定外来生物に指定した。

アマミノクロウサギ

現地で組織された「奄美マングースバスターズ」のメンバーが山中に多数の捕獲わなを仕掛けたり、無人カメラをセットしたり、探索犬を用いるなどした結果、平成30年に捕獲した1匹を最後に、その後は無捕獲が続いていた。この状態の詳細な数理解析を経て今回のマングース根絶宣言となったのだ。

駆除活動でマングースが減少するにつれ、アマミノクロウサギのほかアマミイシカワガエルなど固有のカエル類の分布域拡大も確認されているという。

海外でも、導入したマングースで同様の問題が起きていて対策に手を焼いている。奄美大島の面積での根絶は世界初の成功例だ。緻密で根気強い駆除活動が功を奏した。過去の失敗から今回の成功に至る歴史は、生物多様性保全の教訓として世界と後世に伝える価値がある。

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