世界で唯一の空気神社がある山形県朝日町は、空気が澄み、豊かな自然に育まれた地だ。その地で、環境保全と地域おこしを目的とした「星空の街・あおぞらの街」全国大会には、高円宮妃久子さまがご臨席し、参加者は美しい自然を未来に守るために一人一人が行動を起こすと誓った。
「きれいな空気・星空・あおぞらを永遠に!」
式典には、約200人が参加する中、伊藤信太郎環境相(当時)は「良好な環境が地域の誇りとして守られ、次の世代に継がれることに期待したい」と式辞を述べた。吉村美栄子・山形県知事は、山形がPM2.5の年平均値が直近の令和3年度のデータで全国で最も少ないことをあげ、「朝日町には空気の恩恵に感謝する空気神社があり、美しい郷土と美しい地球への願いがこめられている」と語った。鈴木浩幸・朝日町町長は「ここ朝日町からきれいな空気、星空、エコミュージアムタウンというメッセージを全国に発信し、人と自然を共生する持続可能な地域となるために意義深い大会にしていきたい」とあいさつした。
久子さまは、「一人一人が何をできるかを考えそれを実行していくことが大切です。大会を機に、自然の尊さについて考え、様々な活動に取り組んでほしい」と述べられた。
郷土の環境を活かした地域おこし
「星空の街・あおぞらの街」全国大会は、星空を観察するなどの身近な方法で、大気環境を大切にする意識を高めるとともに、郷土の環境を生かした地域おこしの推進を図ることを目的にして、1989年から毎年全国各地で開催。第7回から久子さまがご臨席している。
山形県朝日町は、世界で唯一の「空気」をご神体とする「空気神社」がある。町は6月5日を「空気の日」とする条例を制定、「ゼロカーボンシティ」を宣言し、空気に感謝する心を育む取り組んできた。これらが評価され、第36回となる全国大会の開催地となった。
エコミュージアムの取り組み
大会では、環境大臣賞が天文普及・啓発のために、1971年から市民参加の天体観測会を開催してきた「山形天文同好会」に、大会協議会会長賞は、自然環境を活かした地域づくりを行ってきたNPO法人朝日町エコミュージアム協会などに贈られ3団体、2個人が表彰された。
久子さまが挨拶の中で言及された、エコミュージアムの取り組みは、「町全体が博物館、住民一人一人が学芸員」として、地域の自然環境資源を活かした地域、人づくりを行うユニークな活動だ。
同協会の長岡信悦理事長は「町の人々が、自分たちの地域の自然や文化をよく理解し、地域に誇りを持って楽しく暮していけることを目指してきました」と話す。
協会は、朝日連峰を一望できる宿泊施設「Asahi自然観」で星空観望会を実施。環境省が行う夜空の明るさ調査の観察登録調査に協力してきた。同地点は、天の川が見えやすいとされる国の等級20等以上に認定されているという。
観察会に参加した5人の小学生も登壇し、「月のクレーターと球状星団のM13を初めて見ました」(小学3年)、「肉眼では一つに見える星が実際には2つに分かれていることを知りました」(小学5年)など、感想を発表した。
長岡さんは「とても誇らしいことだ。子どもたちに星空の美しさと郷土愛を伝えていきたい」と話す。
地方創生に企業も
空気神社は、「山のきれいな空気の中で仕事すると気持ちがいい」と一人の農家が提唱。当初は理解が得られなかったが彼の死後の1990年、地元の人たちがお金を出し合い、ブナ林の中にステンレス製の本殿が建設された。神社といっても、モニュメントという位置づけになっている。ご神体は「空気」。かしわ手の音の反響で神様を感じる世界で唯一、空気を祀る神社として知られるようになった。
空気つながりで、パナソニック株式会社空質空調社が町の小学校で空気の大切さを学ぶ「キッズエアラボ」を開催、空気の力で衝撃から守る緩衝材「プチプチ」の製造会社「川上産業」や「ダイキン工業」などの企業も町と連携している。
星空が美しいということは街の明りが少ない過疎地という裏返しでもある。町は全国の地方と同様、人口減少という課題にさらされている。しかし、世界で唯一の空気神社を核にした地域おこしで、環境大臣も出席する大会開催を実現した。
式典翌日、久子さまは国名勝の「大沼の浮島」で視察、植樹されたほか、道の駅あさひまちで、特産のリンゴなどの果物の説明を受けられ、朝日町の宝物を知ってもらう機会となったという。
空気の大切さを訴える一人の村人の願いが空気神社を実現、自然を守る気持ちを育むとともに町の未来へとつなげた。
(朝日町がJAPANForwardであるウェブサイト、Japan 2 Earth のロゴパートナーである。)
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