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脱炭素から日米金融が「離脱ドミノ」 国際枠組み加盟にトランプリスクが浮上

US President Donald Trump (February 13, 2025) (©Reuters)

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米国と日本の大手金融機関が、脱炭素を目指す金融機関の国際的な枠組みから続々と離脱するドミノが止まらない。気候変動対策に否定的なトランプ氏が米大統領に就任し、訴訟に巻き込まれるリスクが急浮上したためだ。だが、世界の脱炭素化を牽引(けんいん)する立場でありながら同氏の顔色をうかがうような姿勢に批判の声も出ている。トランプ米政権の政策は自由貿易だけでなく、脱炭素でも世界の枠組みを揺るがしている。

トランプ政策が脱炭素の逆風に

ゴールドマンもシティも

枠組みは「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」。バイデン政権下の2021年に設立され、参加金融機関は昨年時点で140超だった。脱炭素を念頭に企業への融資や投資の配分を見直し、50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指している。

ところが昨年11月にトランプ氏の返り咲きが決まると、機を見るに敏とばかりにゴールドマン・サックスやシティグループなど米金融機関が立て続けに抜けた。

日本にもその流れは波及。3月に三井住友フィナンシャルグループ(FG)が先陣を切り、三菱UFJフィナンシャル・グループやみずほフィナンシャルグループなども後に続いた。金融機関で残るのは三井住友トラストグループだけだ。

脱炭素の国内金融機関の対応

反トラスト法に抵触の恐れも

背景にはNZBA加盟が化石燃料企業への融資の削減につながる場合、反トラスト法(独占禁止法)に抵触する恐れがあるとの見方がある。米議会では共和党議員を中心にNZBAに「気候カルテル」と批判の声が上がる。「相互関税」など民間のビジネスを混乱に陥れる政策を平気で打ち出すトランプ政権の下でNZBAに残るのはリスクが大きいというわけだ。

脱退済みの各社は脱炭素の取り組み自体は継続するというが、メガバンク関係者は「脱炭素を重視するから加盟したのではなかったのか。他社が抜けたのでうちもということだろう」と言行不一致の対応を批判する。

環境に配慮した商品は割高になるケースが多いが、それでも金融機関が脱炭素につながる技術などに手厚い支援を行うからこそ、「脱炭素には価値がある」という意識が醸成され、取り組みが推進される側面もある。一連の「NZBA脱退ドミノ」は、このトーンを一気に変える引き金になりかねない。

筆者:根本和哉(産経新聞)

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