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【佐渡生き物語】18歳のトキ50番の"年の差婚"

A rare photo of No 50 as a chick, around 7–14 days old, still covered in soft, fluffy down. (Photo courtesy of veterinarian Yoshinori Kaneko)

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新潟県佐渡で、いったんは絶滅したトキの野生復帰から16年が経過。オス18歳が3歳の若いメスとペアを作った。今年はヒナ誕生にはいたらなかった50番の軌跡をたどる。

個体識別番号50番

野生復帰のための放鳥が行われて17年。トキ撮影の日課の中で、特に気になるトキがいる。個体識別番号50番のオス、18歳だ。

トキのモニタリングの面白さの一つとして、放鳥される全ての個体に装着されている足輪の番号で個体識別を行えることだ。生存率や生息場所が判別できるほか、過去の夫婦関係やペアになった際の血縁関係まで追うことができる。

撮影した写真で足環の番号を確認すると、たくさんのよいショットに50番の姿がとらえられていた。今年に入ってから我が家の近所でよく見かけることができる。

食欲旺盛な50番(大山文兄撮影)

4羽の兄弟の3番目

32年間にわたって佐渡トキ保護センターで野生復帰事業にかかわってきた金子良則・獣医師にとっても50番には、特別な想いがあるという。

50番は、絶滅したトキ復活のために中国から日本に贈られたペア「友友」(ユウユウ)と「洋洋(ヨウヨウ)」の子である新新(シンシン)とのペアから2007年に生まれた4兄弟のうちの3番目だ。

金子獣医師は、「トキのヒナは多くても3羽が一般的だが、センターでふ化した初の4きょうだいだったためよく覚えている」と話す。佐渡トキ保護センターで4きょうだいがふ化したのはこれまで3組しかいないという。今回特別に、50番の家族の写真を提供してくれた。

生後21~31日目の50番の兄弟と親(金子獣医師提供)

トキは1日おきに産卵するため、1卵目と4卵目では約1週間の間があく。ふ化してまもないヒナは50gほどだが1週間もすると150gにまで体重が増え、ふ化したばかりの4番目のヒナは先にふ化したヒナの下敷きになり圧死したり、エサの争奪戦に負けてエサを求めて巣の中を動き回り巣から落下して死んでしまうことが多いという。

桜の中、枝を運ぶ50番(大山文兄撮影)

産卵にはいたらず

50番が放鳥されたのは2010年の11月。現在、4兄弟のうち生存しているのは50番だけになった。年齢も18歳と放鳥トキの中で2番目の長寿になる。ちなみに、一番の長寿は2006年生まれの19歳のオスだ。

トキは飼育下では20年以上生存するが、野生下の厳しい環境では放鳥後10年経過すると、生存率は下がる。15歳下の若いメスとペアになり、せっせと巣作りのために枝を運んでいた50番だが、今シーズンはヒナ誕生にはいたらなかった。オスの繁殖能力は20歳、メスは18歳。50番の繁殖年齢もそろそろ限界に近づいている。放鳥後15年経っても繁殖に参加した生命力豊かな50番を、追い続けていきたい。

雪の中の50番(大山文兄撮影)
巣材となる枝を運ぶ50番(大山文兄撮影)

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大山文兄(おおやま・ふみえ)産経新聞社写真報道局で新聞協会賞を2回受賞。新聞社時代に11年間にわたり、トキの野生復帰を取材。2020年に退社して佐渡島に移住、農業に従事しながら、トキをはじめとする動物の写真を撮り続けている。映像記者として佐渡の魅力を発信中。インスタグラムでフォローしてください

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