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COP30開幕へ 温暖化対策問い直す時だ 中国の負の影響力排除したい

UN Secretary-General Antonio Guterres speaks about the COP30 climate summit in Belem, Brazil, on November 6. (©AP via Kyodo News)

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地球温暖化の防止策を協議する国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)が11月10日から21日までの日程で、ブラジル・ベレンで開かれる。

今回はCOP史上における主要な節目に当たっている。ドイツでのCOP1から30年、京都議定書の発効から20年、現行のパリ協定採択からは10年だ。

この間、二酸化炭素に代表される温室効果ガス(GHG)の排出削減への努力が続けられてきたが、気温上昇のペースが和らぐ気配は見えない。

米国のパリ協定離脱表明などに伴う変化もあり、実効性を考慮すればCOPのあり方を問い直すべき時機を迎えているのでないか。

目標超える気温上昇に

パリ協定は、気温上昇幅を産業革命前の水準から1・5度以内にとどめることを目指しているのだが、昨年の世界平均気温はそれを超えた。

国連が主導する対温暖化戦略は「緩和策」と「適応策」で構成される。前者はGHGの排出量を削減する取り組みで、後者は気温上昇が引き起こす大雨や干魃(かんばつ)といった気象災害の被害を防止、軽減する治水計画などの対策だ。

COP30首脳級会合に参加した各国首脳ら=11月7日、ブラジル・ベレン(COP30事務局提供、ゲッティ=共同)

国連はこれまで緩和策を重視して、パリ協定では先進国と途上国にGHGの排出削減強化を求めてきた。各国・地域は5年ごとに削減目標(NDC)を更新することになっており、今COPでは2035年の目標提出が求められている。

この評価が今回の主要議題だが、国際社会の足並みは乱れている。1月に再就任したトランプ米大統領は、パリ協定からの再度の離脱を宣言した。

そうした中で、日本は2月に13年度比で60%減とする35年度のNDCを国連に提出している。30年度のNDCが46%減だったことを考えると、大幅な積み増しとなる。

これに対し世界最大の排出大国である中国のNDCは30年が「排出のピークアウト」という数値のない目標で、9月に表明した35年NDCも「ピーク比7~10%減」だ。削減どころか今後5年間は排出増加が続く。

米国の正式離脱は1年後であるものの、不在となる影響は大きい。その空白を利用して中国は温暖化の原因は先進国にあるとする「気候正義」を唱え、途上国への資金支援や技術協力への旗振りに余念がない。まともなNDCさえ示さない中国の主張にとらわれてはならない。

トランプ氏は地球温暖化問題を「愚かな人々が作り上げた史上最大の詐欺」と評したが、この過激な発言には、真理の一端が含まれている。

トランプ米大統領(ロイター=共同)

大気中の二酸化炭素濃度の上昇が気温上昇を起こしているとする「定説」に疑問を呈する研究者は少なくない。温暖化の主因が地球の気候システムが抱える自然変動であれば、GHGの削減は徒労に等しい。

COP30では、これまで脇役感の強かった「適応策」に焦点を合わす動きがあることに注目したい。多くの人的被害や、経済的損失の軽減につながる現実的な対応である。

また国連には、気候変動の原因に迫る科学研究の多様化にも力を入れてもらいたい。太陽磁場が及ぼす影響などは無視できない。GHG原因説以外の研究が予算や論文掲載で不利益を被る事態はあってはならない。

日本は原発再稼働急げ

開催国ブラジルの国土には、生物多様性を誇る地球最大の熱帯雨林・アマゾンが広がる。

ブラジルのルラ大統領(共同)

アマゾンは「地球の肺」ともいわれる機能を果たすが、農地開発のための違法伐採の横行による森林喪失が深刻だ。ブラジル政府には、COP開催をアマゾンの保全強化の足掛かりにしてもらいたい。

COP30では先進国から途上国に提供する気候変動対策資金についても協議される。前回のCOP29では従前の年1千億ドル(約15兆円)から3千億ドルに増えている。

努力目標としては、35年までに年1・3兆ドルという金額に肥大している。途上国の資金稼ぎの場と化した感があるCOPの議論は、地球を守る理想からほど遠い。

日本の35年度NDCの達成には脱炭素電源の主役である原発の活用が不可欠だ。高市早苗政権には東京電力の柏崎刈羽原発をはじめとする原発の再稼働に向けての諸環境を整えてもらいたい。人工知能(AI)の社会実装や半導体産業の復活にも安定電源の拡大が急がれる。

2025年11月8日付産経新聞【主張】を転載しています

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