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「かいぼり」で水辺の環境再生 NPO法人「生態工房」片岡友美理事長(49)

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池の水を抜き、池底の泥をさらって、天日干しする「かいぼり」。かつては農村でため池の管理のために盛んに行われてきたが、減反政策などの影響で次第に廃れていったという。NPO法人「生態工房」(武蔵野市)の片岡友美理事長(49)は、かいぼりを水辺の環境再生の手段として都市部で復活させるとともに、環境保全活動を通じて住民の輪を広げている。

住民同士のつながり

片岡さんは、大学と大学院で動物生態学を研究した後、生態工房へ入り、水辺の環境保全活動などに取り組んできた。

当初直面したのは、外来種問題。都市部の公園にはブラックバスやブルーギルなどの外来魚が蔓延(まんえん)していた。「まず、これをリセットしなければ、自然を再生する次のステップに進めない」と思ったという。

そんなとき、外来魚対策として、地方の各地で「かいぼり」が実施されていることを知った。勉強しに行くと、外来魚対策としての有効性はもちろんのこと、「なんて楽しい作業なんだ」と感じた。

生態工房は、片岡さんが入る前の平成13年度に、すでに都立光が丘公園(練馬区など)で初のかいぼりを実施していたが、浸透はしていなかった。

片岡さんは、都市部でも必ず需要があると思い、25年度に、武蔵野市と三鷹市にまたがる都立井の頭恩賜公園の井の頭池でも行った。活動の核となる地域ボランティア「井の頭かいぼり隊」も発足し地域住民らが参加。水辺の再生を通じて住民同士のつながりも生まれ始めた。

井の頭池 =3月10日、武蔵野市の井の頭公園(内田優作撮影)

外来魚を「駆除」

井の頭池では、27年度と29年度にも、かいぼりを実施した。計3回のかいぼりでブルーギルやブラックバスなどの外来魚がゼロになったほか、イノカシラフラスコモという在来種の水草が約60年ぶりに生育しているのも確認されたという。片岡さんによると、池底で眠っている在来種の水草の種子や胞子が、かいぼりによって空気や光に触れることで発芽することがあり、イノカシラフラスコモも、そうして〝復活〟したとみられる。

井の頭池では、その後も数年ごとにかいぼりが行われる予定だったが、29年度を最後に実施されていない状況が続いている。こうした中、昨年4月に片岡さんは理事長に就いた。

井の頭自然文化園水生物館に展示されているイノカシラフラスコモ(同園提供)

中山間地に拠点拡大

9月10日、多くの人でにぎわいを見せる井の頭恩賜公園に、その片岡さんの姿があった。「井の頭かいぼり隊」のボランティアらとともに浮輪のような道具を身に付けて井の頭池へ入ると、池の中に仕掛けられたわなを引き上げ始めた。

行われていたのは外来種であるアメリカザリガニの駆除活動。片岡さんは「(ザリガニは)水草を切ってしまうため、在来種の水草が壊滅的なダメージを受ける」と話す。この日は約15人が約120カ所に仕掛けられたわなを手際よく確認し、アメリカザリガニを捕獲。1時間ほどの作業で500匹以上のアメリカザリガニが駆除された。

池から上がった片岡さんは「外来種のコカナダモという水草が増えており、池の環境が悪化している。対策としてはかいぼりを行うことが有効になる」と指摘する。

こうした取り組みが評価された生態工房は、地域文化の発展に貢献した団体や個人を顕彰する第44回サントリー地域文化賞の受賞が決まった。会見で片岡さんは「今後は、都会だけではなく、中山間地にも拠点を広げていき、地域再生にかかわっていきたい」と抱負を語った。

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