ダイキン、磁力を使ったエアコン実用化を来年中に判断 脱炭素で空調メーカーの開発加速
日本の空調メーカーが環境負荷の低い冷暖房技術の開発を急いでいる。ダイキンは磁力を使ったエアコンの技術開発を進める。パナソニックは自然冷媒を使った暖房機を近く発売。
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世界で脱炭素へ向けた動きが加速する中、国内空調メーカーが環境負荷の低い冷暖房技術の開発を急いでいる。ダイキン工業は磁力によって温度を変化させる「磁気熱量効果」を活用した技術開発を進める。令和6年中には、エアコンなどの空調機に利用できるかどうか判断する。また、パナソニックホールディングス(HD)も温暖化への影響が少ない自然冷媒を使った暖房機を5月に発売する。
ダイキンは、磁石を近づけると発熱し、遠ざけると温度が下がる「磁性体」と呼ばれる物質の性質を活用しようと研究を進めている。磁性体の温度変化によって生じた熱や冷気を水に伝えて運ぶことで冷蔵や冷凍、冷暖房に活用できる。
実用化にあたっては、磁石の大型化が予想され、製造コストも高いという課題もある。ただ、高性能の磁性体が開発されるなどして冷暖房機として実用化できると従来品と比べて約2割の省エネになる。
新技術は、地球温暖化対策にも効果があるとされる。現行の冷暖房機は冷媒に圧力をかけた際の温度変化を利用しているが、使われる「代替フロン」と呼ばれる物質の多くが二酸化炭素を大きく上回る温暖化効果を持っており、世界で規制が進む。磁力を活用すれば冷媒を使う必要がなく、ダイキンの担当者は「空調機に使えると判断した場合は、磁石の小型化や生産方法の確立を急ぐ」と意気込む。実用化が可能と判断されれば、12年をめどに実用化を目指す。
パナソニックHDも昨年10月、代替フロン規制に対応した商品を発表した。欧州向けの暖房機で、冷媒に温暖化効果の非常に低いプロパンを日本企業として初めて使用した。通常、プロパンは可燃性があるため、安全性が大きな課題となるが、同社はプロパンが屋内に漏れ出ないよう密閉性を高め、発火の原因となる電子部品が入っている箱を隔離する工夫をこらす。空質空調社のグローバル空調開発センター長、藤社(とうしゃ)輝夫氏は「ここまで対策しているメーカーはほかにはない。ガス機器を長年開発してきたわれわれには一日の長がある」と自信を見せる。まずは欧州市場に商品を投入し、ラインアップを拡充していくという。
世界中で脱炭素へ向けた規制強化が進む今、日本の空調メーカーの技術力が試されている。
筆者:桑島浩任(産経新聞)
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