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清らかな水が渓谷を流れ、滝やコケむした森が連続して現れる。数千年以上をかけて、自然が造り上げた屋久島(鹿児島県屋久島町)の地形は美しい。なかでも北東部に位置し、島の魅力がつまった白谷雲水峡は芸術品のようだ。
屋久島は、鹿児島市から約135キロ南に浮かぶ円形の島だ。島内は海岸から最高峰の宮之浦岳(標高1936メートル)まで標高差が大きい。亜熱帯気候や亜寒帯気候が存在し、冬には南の島にもかかわらず山間部に雪が降る。
この特殊な環境は多様な植生を育んできた。樹齢千年を超える杉は「屋久杉」と呼ばれ、最高齢とされている「縄文杉」は島のシンボルだ。
平成5年の世界自然遺産登録で観光客数は増加し、ピークとなった平成19年度には年間40万人を突破、コロナ禍前の令和元年度は約25万人が訪れた。
「世界遺産登録以来、観光と環境保護のバランスを考え続けてきた」と関係者は口をそろえる。
町などは平成16年、「屋久島地区エコツーリズム推進協議会」を設立。観光客に自然への理解を深めながら島を楽しんでもらおうと、認定ガイド制度を導入した。
水力発電や電気自動車(EV)の普及にも力を入れる。
屋久島は山間部の年間降水量が8000ミリを超える。全国平均の5倍近くだ。
豊富な水資源を生かし、島内の年間発電量の99・6%を地元企業「屋久島電工」の水力発電所がまかなっている。町は「CO2(二酸化炭素)フリーの島づくり」を掲げる。
「自然エネルギーの地産地消が脱炭素への近道。今後は観光用のモビリティーをEV化することも検討している」と町観光まちづくり課の岩川健課長(42)は話す。
世界遺産登録から30年。観光と環境保全がバランスを保つエコツーリズムの実現を目指して、屋久島の歩みは続いていく。
筆者:松井英幸(産経新聞写真報道局)
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