大自然と観光「共生」模索し30年 世界遺産「屋久島」

世界遺産「屋久島」では、観光と環境保全のバランスを保ち、エコツーリズムの実現を目指す。

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清らかな水が渓谷を流れ、滝やコケむした森が連続して現れる。数千年以上をかけて、自然が造り上げた屋久島(鹿児島県屋久島町)の地形は美しい。なかでも北東部に位置し、島の魅力がつまった白谷雲水峡は芸術品のようだ。

屋久島は、鹿児島市から約135キロ南に浮かぶ円形の島だ。島内は海岸から最高峰の宮之浦岳(標高1936メートル)まで標高差が大きい。亜熱帯気候や亜寒帯気候が存在し、冬には南の島にもかかわらず山間部に雪が降る。

森の奥へと続くトロッコ道に現れたヤクシカ =鹿児島県屋久島町(松井英幸撮影)

この特殊な環境は多様な植生を育んできた。樹齢千年を超える杉は「屋久杉」と呼ばれ、最高齢とされている「縄文杉」は島のシンボルだ。

樹齢2000年を超える縄文杉 =鹿児島県屋久島町(松井英幸撮影)

平成5年の世界自然遺産登録で観光客数は増加し、ピークとなった平成19年度には年間40万人を突破、コロナ禍前の令和元年度は約25万人が訪れた。

ウィルソン株の内部から上を見上げるとハート型に見える =鹿児島県屋久島町(松井英幸撮影)

「世界遺産登録以来、観光と環境保護のバランスを考え続けてきた」と関係者は口をそろえる。

屋久島の森が一望できる太鼓岩 =鹿児島県屋久島町(松井英幸撮影)

町などは平成16年、「屋久島地区エコツーリズム推進協議会」を設立。観光客に自然への理解を深めながら島を楽しんでもらおうと、認定ガイド制度を導入した。

水力発電や電気自動車(EV)の普及にも力を入れる。

屋久島は山間部の年間降水量が8000ミリを超える。全国平均の5倍近くだ。

視界に入る全ての物がコケで覆われた空間が広がる =鹿児島県屋久島町(松井英幸撮影)

豊富な水資源を生かし、島内の年間発電量の99・6%を地元企業「屋久島電工」の水力発電所がまかなっている。町は「CO2(二酸化炭素)フリーの島づくり」を掲げる。

人の顔に見える切り株 =鹿児島県屋久島町(松井英幸撮影)

「自然エネルギーの地産地消が脱炭素への近道。今後は観光用のモビリティーをEV化することも検討している」と町観光まちづくり課の岩川健課長(42)は話す。

屋久島に生息するヤクシマザル =鹿児島県屋久島町(松井英幸撮影)

世界遺産登録から30年。観光と環境保全がバランスを保つエコツーリズムの実現を目指して、屋久島の歩みは続いていく。

筆者:松井英幸(産経新聞写真報道局)

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