太陽光パネルの放置防げ 10年後に大量廃棄時期到来 技術確立へ対策急ぐ
全国に設置された太陽光パネルが2030年代中盤に大量廃棄の時期を迎える見通しとなり、国が対策を急いでいる。
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全国に設置された太陽光パネルが2030年代(令和12~21年)中盤に大量廃棄の時期を迎える見通しとなり、国が対策を急いでいる。中国製の安価な輸入パネルはヒ素など有害物質が含まれる恐れがあり安全な処理が必要だが、費用がかさめば適切に廃棄されず放置や投棄が増えかねない。
太陽光パネルが全国で一斉に広がったのは平成24年からだ。この年、政府が再生可能エネルギーの普及を目指し、発電した電気の全量を電力会社に買い取らせる固定価格買取制度(FIT)を導入したのを契機に、参入する事業者が続出した。
ただ、買い取り期間は10キロワット以上の設備で20年間。令和14年には初期に参入した事業者の買い取りが終了し、売電価格が大幅に下落する見通し。パネルの寿命は20~30年で、およそ10年後には大量廃棄の時期を迎える。
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の試算ではパネル廃棄のピークは17~19年頃になりそうで、年間17万~28万トン程度の廃棄を見込む。
積立金不足の懸念
パネルの廃棄は事業者の責任だが、多くが対策を講じてこなかった。このため、4年4月施行の改正再生可能エネルギー特別措置法で、太陽光発電設備の廃棄費用の積み立てが義務化された。稼働から10年が経過した出力10キロワット以上の設備などが対象で、売電収入から廃棄に充てる積立金が自動的に引かれる仕組み。
問題になるのは廃棄コストが積立額を上回るケースだ。パネルには一般的に鉛やセレンなど有害な物質が含まれる上、安価な中国製パネルには透明度を上げるため猛毒のヒ素などが含まれている場合があり、安全に廃棄するには費用が膨らむ。また、パネルや土台などの設備が放置された場合は、火災や土砂崩れなど災害を誘発しかねない。
リサイクルを支援
リサイクルの技術的なハードルも高い。ガラス技術研究所の織田健嗣所長によると、パネルに使うガラスには取り除くのが難しい化学物質が含まれているため、現状では断熱材に使うグラスウールなど取り除かなくても利用できる用途にリサイクルが限定されている。
環境省は産廃事業者の技術力向上に向け、高度な技術を活用するリサイクル事業を国が認定し、事業拡大を支援する法案を今国会に提出。伊藤信太郎環境相は4月の記者会見で「(パネルの)安全な廃棄が重要だ。大量廃棄が起きる前に技術を確立したい」と述べた。
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