【佐渡生き物語】トキのヒナ81羽が誕生、まもなく独り立ち!!

新潟県佐渡島の生き物を紹介する映像記者、大山文兄のフォトエッセイの第11回目は国の特別天然記念物トキのなかなか見られない、幼鳥の姿をお届けします。

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夏を迎えた新潟県佐渡島では、国の特別天然記念物、トキの幼鳥が羽ばたきの訓練をしている光景が見られるようになっている。まだ、親に甘えているが、独り立ちももうすぐだ。

オレンジ色の顔

夏を迎え、佐渡の日の出も午前4時台に。眠い眼をこすりつつ朝早く撮影に出かける日々が続いている。お目当ては、トキの幼鳥だ。

幼鳥といえど身体だけみれば、親とさほど変わらないサイズにまで成長している。一見すると、親か子か判別しにくいが、顔を見れば違いがわかる。後頭部の冠羽(かんう)がまだ短く、何より顔の色が真っ赤ではなく、薄いオレンジ色が幼鳥だ。

トキの羽のトキ色といわれる鮮やかなピンクオレンジは、エサであるカニやザリガニを食べることで、カロテノイドという色素を体内に取り入れているのが要因とされる。幼鳥は顔の色だけでもなく、羽の色もまだ淡い。

親からエサを口移しでもらうトキの幼鳥(左端)(大山文兄撮影)

今季の繁殖で81羽のヒナが誕生

環境省佐渡自然保護官事務所は7月9日、今季の繁殖が終了し、93ペアの営巣が確認され、うち37ペアから81羽のヒナが誕生したことを発表した(速報値)。このうち65羽が巣立ったという。

93ペアのうち、野生下で誕生したトキ同士のペアによる営巣は39ペア。うち21ペアから46羽のヒナが誕生している。着実に野生下でのトキ繁殖が行われているのは喜ばしい。

ちなみに、幼鳥の両足が巣から完全に外に出たときを巣立ちしたとカウントする。

とはいえ、巣立ちしたからといって上手にエサをとれるは別問題。幼鳥が飛ぶ力が弱く、枝から田んぼに直接飛行できず、屋根にいったん着地して休憩している様子も観察された。

飛距離がなく田んぼに降りられず、枝から屋根に移ったトキの幼鳥(大山文兄撮影)

がんばれ、幼鳥!

トキの子育ては、オス、メス両方が協力して、ヒナに給餌する。ヒナの成長に合わせ、消化途中のエサを口移しで与える。ヒナはおねだりするだけでいいわけだが、巣立ち後は巣から出ていかなければならない。最初はエサとりもまだぎこちない。幼鳥の不安がファインダー越しに伝わってくるようだ。田んぼで顔を泥だらけにしている幼鳥を撮影しながらがんばれよ!!と心の中で声をかけた。

田んぼでエサをとるために顔を泥だらけにしているトキの幼鳥(大山文兄撮影)

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大山文兄(おおやま・ふみえ)産経新聞社写真報道局で新聞協会賞を2回受賞。新聞社時代に11年間にわたり、トキの野生復帰を取材。2020年に退社して佐渡島に移住、農業に従事しながら、トキをはじめとする動物の写真を撮り続けている。映像記者として佐渡の魅力を発信中。インスタグラムでフォローしてください

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