タイ、ミャンマー国境で密猟される野生動物たち WWF日タイ協力で犯罪摘発

WWFタイ支部と日本支部の支援で昨年、ミャンマーに近いタイ南部で大がかりな野生動物密輸犯罪が摘発された。

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ミャンマーのタイ国境付近を根城にする特殊詐欺集団が世間を騒がしている。特殊詐欺にかかわったとされる何千人という外国人が拘束されたり、保護されたりしたことは衝撃だった。かねてミャンマーの少数民族武装勢力が支配し、無法状態になっているこの地帯。実は、周辺で被害に遭っているのは人間だけでない。絶滅の恐れのある野生動物も同じで、密猟、密輸集団が跋扈しているのだ。

昨年5月、ミャンマーに近いタイ南部ダンシンコンで、大がかりな野生動物密輸犯罪が摘発された。インドネシアのスマトラ島経由で野生生物を車4台で輸送中の密輸業者6人と、協力者の飼養施設運営者1人が逮捕され、押収、保護された動物は、アフリカの島国マダガスカルに生息するホウシャガメ1076頭やキツネザル48頭など多数に上った。後にマダガスカルでも密輸グループが摘発された。

押収されたマダガスカル産のキツネザル©WWF Thailand

摘発を支えたのは、世界自然保護基金(WWF)タイとジャパンだった。

日本の税関ではワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)違反で多くの動物が差し止められてきた。WWFと国際自然保護連合(IUCN)が設立した「TRAFFIC」のまとめでは、その数は2007~18年で1100匹余りに及ぶ。中国と並び、主要な輸出国になっていたのがタイだった。

タイには、野生生物の密輸を取り締まる官民連携のネットワークを作る実績がある。違法麻薬ビジネスで有名なタイ、ミャンマー、ラオス国境の「ゴールデントライアングル」(黄金の三角地帯)など3カ所で既に組織されており、タイと日本のWWF、それに警察や軍、税関などがダンシンコンで21年、同様のネットワークを立ち上げた。昨年の摘発は、その協力態勢の成果だった。

ダンシンコンのプロジェクトを担当したWWFジャパンの小田倫子さんによると、イヌやネコとは異なり、野生で捕獲されたものを含む海外産の動物を対象にした「エキゾチック・ペット」は日本で需要があり、カメやサルが持ち込まれる。

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筆者:岩田智雄(産経新聞)

3月26日産経ニュース【世界行動学】より

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