【佐渡生き物語】トキの数が減少、巣の過密が原因か
新潟県佐渡島の生き物を紹介する映像記者、大山文兄のフォトエッセイの第7回目は、国の特別天然記念物トキの数が減少した背景と、求愛のその後についてお伝えします。
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恋の季節もそろそろ終盤に近付き、パートナーを見つけたペアが巣作りの準備を始める季節に突入する。
ペアとなり新居探しに
前回のエッセイで、求愛期に入り羽の色が黒く変化したトキのオスが、気に入ったメスに「枝渡し」して、愛情を表現することを紹介した。枯れ葉や小枝を折って渡す行動を繰り返しながら愛情を深め、ペアとなったトキは、マイホームとなる営巣地を探す。
生息数、放鳥開始以来初の減少に
トキを観察し続けている私にとって、少しショッキングなニュースが飛び込んできた。昨年12月時点の野生下でのトキの生息数が、532羽(推定)、前年末より13羽減少したことが環境省の発表でわかったのだ。トキの放鳥が始まった2008年以来、初めて減少に転じたことになる。
内訳は、放鳥個体が152羽、野生下で誕生したのが380羽。放鳥開始以来、個体数は増加傾向だったが、ここにきて足踏みしてしまった。
繁殖の成績もかんばしくなかった。2023年は、165組のペアが営巣、前年とほぼ横ばいだったが、巣だったのは27ペアで55羽だった。ヒナのふ化率、巣立ち率とも前年のほぼ半減となり、過去2番目に低い数字だった。
原因は混み合いすぎ?
トキ減少の要因は、放鳥場所周辺にトキが多く生息することから、天敵であるテンやカラスに見つかりやすくなり、トキが襲われたことが考えられる。また、神経質なトキにとって互いの存在がストレスになり、落ち着いて繁殖できなくなったのではないかという。繁殖期の大切な時期にエサを十分に取れず、栄養不足になったことも孵化率が低くなった一因とも考えられるという。
トキの放鳥にも工夫
こうした繁殖しにくい状況を改善するため、環境省は新たな策を打ち出すことを決めた。今年6月に予定している放鳥は、順化ケージがある環境省の施設から離れた島北部の「大佐渡エリア」で行うことにしたのだ。この地域で放鳥するのは初めてのことだ。
トキは田植えの時期に稲を踏みつぶすとして害鳥扱いされてきた歴史がある。このため、放鳥するにあたっては地元への説明が欠かせない。
トキの野生復帰を確実なものにするためには、トキのエサ場づくりに始まり、住民の温かい理解が必要になってくる。
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大山文兄(おおやま・ふみえ)産経新聞社写真報道局で新聞協会賞を2回受賞。新聞社時代に11年間にわたり、トキの野生復帰を取材。2020年に退社して佐渡島に移住、農業に従事しながら、トキをはじめとする動物の写真を撮り続けている。映像記者として佐渡の魅力を発信中。インスタグラムでフォローしてください。
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