佐渡生き物語 | 身近な鳥だったスズメが消える!?
新潟県佐渡島の生き物を紹介する映像記者、大山文兄のフォトエッセイの第17回目は、あたりまえの光景だったスズメが絶滅の危機にあることから、佐渡のスズメについて報告します。
童謡にも登場する、日本人にとってお馴染みのスズメ。ところが、このスズメが「絶滅危惧種」相当のペースで減少しているという。2024年10月、国が発表した。国の特別天然記念物、トキの写真を撮影するために東京から佐渡島に移住して4年になるが今回初めて、スズメのショットを撮りにいった。
スズメ団子発見!
稲が刈られ、色鮮やかな葉も落ち、冬の佐渡には寒々とした光景が広がる。稲刈りのときによく見かけたスズメを撮影しようと車で周回した。すぐに見つけられるだろうと思っていたのだが、トキはいるのに、スズメの姿がない。
「今日はおまえたちじゃないんだよ」
トキを素通りしてスズメ探しを続ける。探すこと3時間あまり。
「スズメ団子だ!」
ススキの中に大量のスズメがいるのを発見した。「スズメ団子」とは、スズメが串の団子のように密着していることを指す。
なぜ、スズメが減ったのか
スズメは全長15cm。日本だけではなく、ユーラシア大陸の広い範囲で分布している。市街地、農耕地など人家の周囲に生息し、草の種子や虫、生ごみなども食べる雑食性だ。人の近くにいながら警戒心が強く、人が近づくと逃げる。
環境省が10月に発表した2005~2022年度の調査分析で(里山の調査は325調査地点)で、スズメは年間減少率3.6%。レッドリストの「絶滅危惧種」の基準となる「年間減少率3.5%以上」に該当した。
減った理由は、スズメが巣を作る家屋の軒下が減ったことや農地の減少、環境悪化による虫の減少などが考えられるという。
中国ではスズメの大虐殺も
佐渡はどうか。
日本野鳥の会佐渡支部長、土屋正起さんは「佐渡でスズメの生息数の調査は行ったことはないが、減少しているとは思えない」と話す。
ただし、1950年代から60年代にかけ、佐渡でもスズメが激減した時期があるという。ちょうどそのころ、中国・毛沢東時代、「四害駆除運動」(1958~1962)が起き、スズメ、ネズミ、蚊、ハエが「四害」に指定されて大規模駆除が行われた。土屋さんは「渡りを行うスズメもいる。中国のスズメ駆除で当時、スズメの渡りが減った可能性がある」と推測する。
スズメは穀物を食べるために日本でも害鳥扱いされてきた。しかし、虫を食べる益鳥でもあり、中国ではスズメの大虐殺後に虫が大量発生して大飢饉が起きたという。
スズメも生物多様性の一部
スズメを見つけるのにはてこずった。これは冬に突入し、エサとなる植物の実や虫がいなくなったことや、スズメが敵に襲われにくいように分散せずに集団になっていたからと思われる。スズメを見つけてもトキより臆病なため、すぐに飛び立ってしまうのにも閉口した。
日本はトキを一度絶滅させた。復活させるために、佐渡では農薬を減らし、莫大な金と時間、そして絶え間ない努力を費やしてきた。自然のバランスの中にいるスズメをトキのように絶滅させてはならない。生物多様性の重要さをスズメが教えてくれる。
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Author: Fumie Oyama
大山文兄(おおやま・ふみえ)産経新聞社写真報道局で新聞協会賞を2回受賞。新聞社時代に11年間にわたり、トキの野生復帰を取材。2020年に退社して佐渡島に移住、農業に従事しながら、トキをはじめとする動物の写真を撮り続けている。映像記者として佐渡の魅力を発信中。インスタグラムでフォローしてください。