【佐渡生き物語】地震に負けない!それでも私たちは生きている

新年初の佐渡のフォトエッセイでは、映像記者の大山文兄が首を褐色にした、珍しい国の特別天然記念物、トキの姿をお伝えします。

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2024年。元日夕に発生した石川県能登地方を震源とする大地震では、日本海をはさんだ佐渡も最大震度5強と津波を観測しました。我が家も揺れましたが、無事です。ご心配いただき、ありがとうございました。

災害が起きても冬、しっかりエサをとり、たくましく生きるトキの姿を紹介します。

繁殖の準備

野生下のトキが求愛期に入る羽の色の変化を確認したと1月5日、環境省佐渡自然保護管事務所が発表した。昨年12月下旬ごろから、首元の羽毛を灰色に着色するのが観測されていた。今の時期は、灰色のトキとそうでないトキが混在している。寒さが厳しくなるにつれ次第に羽の色の濃さが増していく。

真っ白に雪に覆われた田の用水路でエサを探すトキ。羽の色が違う(大山文兄撮影)

以前のフォトエッセイでも紹介したが、トキが繁殖に向けた求愛期に入ると、首のあたりの皮膚からはがれ落ちる黒い物質を水浴びの後にこすりつけ、灰色に着色する。この習性はトキ特有で、オスもメスも行う。理由は、巣で卵を抱く際の保護色だとされる。

冬も豊かな佐渡

雪が降りつもるとエサ探しに苦労すると思われているが、実は冬も意外にトキのエサは豊富だ。凍らない田の用水路や川で冬眠している小動物がエサになる。撮影したトキに捕獲されたのは冬眠していたクロサンショウウオだ。全長13~15センチ。森林伐採などの環境悪化で、新潟県の準絶滅危惧種に指定されているが、もちろんトキにはそんな忖度はない。生きるために、見つけた貴重なエサをついばみ、繁殖に備える。

クロサンショウウオをしっかりクチバシでとらえるトキ(大山文兄撮影)

復興のシンボルに

2023年は、日本産の最後のトキ、キンが絶滅して約20年。その年の11月に、中国から贈呈されたメスのトキ「洋洋」が死亡するという、トキの野生復帰の節目の年でもあった。この年、本州の福島県内や、新潟県長岡市でも相次いでトキが観測された。

被災地でトキが復興のシンボルになる日を願って(大山文兄撮影)

そして、本州におけるトキ放鳥の候補地となっていたのが、地震被害が大きかった石川県珠洲市だ。今はそれどころではないだろうがいずれ、トキが復興のシンボルになることを願っている。

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大山文兄(おおやま・ふみえ)産経新聞社写真報道局で新聞協会賞を2回受賞。新聞社時代に11年間にわたり、トキの野生復帰を取材。2020年に退社して佐渡島に移住、農業に従事しながら、トキをはじめとする動物の写真を撮り続けている。映像記者として佐渡の魅力を発信中。インスタグラムでフォローしてください

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