下水処理施設屋上で「コアジサシ」繁殖 見守るNPOの試行錯誤 大田区・昭和島

日本で絶滅の危険性が高くなっている渡り鳥「コアジサシ」の保全に取り組むNPOの活動

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東京湾に浮かぶ人工島の一つ、昭和島(東京都大田区)。都下水道局の森ケ崎水再生センターの屋上に毎年春、繁殖のためにやってくる渡り鳥「コアジサシ」を見守る一団がある。日本では絶滅の危険性が高くなっているこの鳥の保全に取り組むNPO法人「リトルターン・プロジェクト(LTP)」のメンバーとボランティアたちだ。

コアジサシは体長20~30センチほどで、水辺の砂浜や砂利などにくぼみを作って巣とし、卵を産む。日本には南半球のオーストラリアやニュージーランドから春に飛来し、繁殖して夏から秋にまた戻っていく。水辺の開発が進んでいることなどから、日本では近年、数が少なくなっている。LTP理事の松村雅行さん(68)は「遠い国から日本に渡ってきて、無事に子育てをしてまた飛び立っていくのを見るとうれしくなる」と話す。

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コアジサシが再生センターの屋上に巣を作っているのが見つかったのは平成13年のこと。当時は、硬いコンクリートの屋上で卵を温めていたという。発見者たちは都下水道局や地元の大田区と協議。LTPが設立され、屋上を使って営巣を手助けする活動が始まった。

再生センターで出た汚泥を高熱で処理した土や砕いた貝殻をまき、巣を作りやすい環境を整備。翌年には多いときで約2千羽が飛来するなど、滑り出しは順調だった。

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コアジサシが巣を作りやすいよう、森ケ崎水再生センター屋上を整備するNPO法人リトルターン・プロジェクトのメンバーやボランティアら=3月、東京都大田区(同団体提供)

しかし、「汚泥を処理した土は園芸用などに使われているものだったため、1年後には自然に生えてきた草で覆われてしまった」(松村さん)。コアジサシは草むらには巣を作らないため、除草が必要になった。当時近所に住んでいた松村さんが活動に携わるようになったのもこの草むしりがきっかけだったという。

また、卵や幼鳥を狙うネコやカラスなどの外敵が集まるように。松村さんは「一度調査したときにあった卵が、次に見たときになくなっていると、いたたまれない気持ちになる」と明かす。LTPは幼鳥が逃げ込めるシェルターやカラス除けグッズを設置するなどして対策を取っているが、全てを防ぐことはできない。

最近はハクビシンやアライグマが入り込んでいることも判明し、松村さんらは侵入経路の特定を進めている。松村さんは「毎年同じ場所で巣を作るので、外敵となる動物にとっては『そこに食べ物がある』と知っている状態になってしまっている」と課題を口にする。

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さらに、日本に飛来するコアジサシの数自体が近年、大きく減少しているという。コアジサシは広い場所に多数のつがいが巣を作り、外敵が来ると共同で防衛するため、数が少なくなると守る能力も低下する。

数が減っていくコアジサシをどう守っていくのか。松村さんは今後の展望について「コアジサシの保全を行っている団体は全国各地にある。それぞれで培った経験を共有できるようなネットワークが作れれば」と語る。希少な鳥を守るため、LTPの試行錯誤は続く。

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