【佐渡生き物語】春、トキ爛漫(らんまん)!今季初の抱卵確認

新潟県佐渡島の生き物を紹介する映像記者、大山文兄のフォトエッセイの第8回目は、国の特別天然記念物トキと花との共演を写真でお伝えします。

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日本海の佐渡にも春が訪れた。ペアになったトキが一生懸命巣作りのために枝を運んでいる姿が観察される。3月21日には、今季初めて営巣、抱卵していることが確認されたと、環境省佐渡自然保護官事務所が発表した。

繁殖に向けて

佐渡も暖かい日々が続き、田植えの準備に向けて忙しい日々を迎えている。トキもまた、繁殖に向けて巣作りに余念がない。その中で、一足早く3月21日、7歳のオスと6歳のメスのペアが木の高所で巣を構え、1羽が卵を抱いているような様子が確認されたことが、環境自然保護官事務所の発表でわかった。

A dark grey crested ibis with a red face stands quietly in a growth of purple flowers.
紫のエゾミソハギとトキ(大山文兄撮影)

抱卵期間は約1カ月。天敵のカラスやテンに襲われることなく、無事進めばヒナが誕生することになる。ただ、こればかりは人間が介入できないため、天に任すしかない。

モテるオスは大きく、黒い?

以前のエッセイでも、繁殖期(1月~6月)に入るとトキは首から黒い分泌物を出し、塗りつけて頭や翼、背の部分が灰黒色になることを紹介した。オスメス両方ともが黒くなる。この黒さがモテるオスの条件の一つだという。そして、身体が大きいことも必要だ。ただ、それだけではないという。

Two crested ibis appear walking alongside a body of water with bloorming white bittercress flowers
田植えに備えて種もみを水を浸す頃に咲くタネツケバナとトキ(大山文兄撮影)

先日、佐渡トキ保護センターに獣医師として30年余り勤め、今もトキの飼育に携わる金子良則さんに「モテるオス」の条件について聞いたところ、上の2つの条件に加え、メスを羽繕いしてあげるなど優しいオスがモテるという。

ペアになっても、別のオスが邪魔しにくることもある。支配下にあることを誇示するためにメスをつつくオスもいる。人間でいうDV(家庭内暴力)だろうか。

ただ、選択権はメスにある。結局、そうした乱暴なオスは子孫を残すことはできない。

「黒くて大きくて優しい」これがモテトキの条件になるというのは、なかなか興味深い。

ベストショットの季節

春は私がもっとも好きな季節だ。毎朝午前5時には撮影スタンバイするのは少々、つらいが、おかげで花とトキのベストショットを何枚も撮影することができた。

One large crested ibis walks alongside a rice paddy on a grassy ridge with scattered wildflowers
花に彩られた田んぼの畦をエサを求めて物色するトキ(大山文兄撮影)

羽根を広げれば美しいピンクオレンジの羽根だが、この時期のトキは、一見、カラスかとみまごうほど黒いときもある。

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大山文兄(おおやま・ふみえ)産経新聞社写真報道局で新聞協会賞を2回受賞。新聞社時代に11年間にわたり、トキの野生復帰を取材。2020年に退社して佐渡島に移住、農業に従事しながら、トキをはじめとする動物の写真を撮り続けている。映像記者として佐渡の魅力を発信中。インスタグラムでフォローしてください

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