【主張】アジアの脱炭素 磨いてきた技術で貢献を
生活や産業を支えてきた化石燃料からの脱却をどう進めるのか。今年はその方策を具体化する1年となる。
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生活や産業を支えてきた化石燃料からの脱却をどう進めるのか。今年はその方策を具体化する1年となる。 国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)は、2050年の温室効果ガス排出の実質ゼロに向け、「化石燃料からの脱却」を進めるとする成果文書を昨年12月に採択した。
地球温暖化防止の「パリ協定」は、産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑えることを目指している。予測を上回るスピードで温暖化が進んでいることから、温室効果を持つ二酸化炭素(CO2)を排出する化石燃料からの脱却を急ぐ必要があると指摘されている。
その方策として再生可能エネルギーの導入拡大が注目されるが、各国の自然条件によって再エネの発電量は大きく変わる。脱炭素の道は一つではない。
その意味で、日本が主導してアジアの脱炭素を目指す「アジア・ゼロエミッション共同体」(AZEC)は重要な役割を担う取り組みだ。日本は磨いてきた脱炭素の技術やノウハウで支援を進め、国際貢献につなげてほしい。
AZECは日本のほか、ミャンマーを除く東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する9カ国と豪州からなる。
中国を含むアジアのCO2排出量は世界の約半分を占める。AZEC参加国は石炭火力発電の割合が高い国が多く、再エネの急速な拡大が難しい自然条件にあることも日本と重なる。
昨年12月に日本で開かれたAZEC初の首脳会談で採択した共同声明には「多様かつ現実的な道筋」で脱炭素を目指すことが明記された。具体的な技術支援として省エネの強化や次世代小型原発、燃焼時にCO2を排出しないアンモニアや水素の活用などが挙げられた。
AZECの推進は、日本の国益にも結びつく。COP28で、日本は米国やフランスが主導した脱石炭の有志国連合に参加しなかった。日本が技術開発で先行するアンモニアを石炭に混ぜて燃やす「混焼」について欧米では、石炭火力の延命策との批判がある。
国際交渉の場で、日本の立場を広く理解してもらうためにも仲間づくりは欠かせない。AZECによってアジアの脱炭素に貢献し、脱炭素には多様な道筋があることを示したい。
2024年1月13日付産経新聞【主張】を転載しています
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