台風に強い風力発電 プロペラ使わず、独自技術で途上国を後押し

強風下でも安定的に発電できる風車を開発し、電力の安定供給に貢献

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日本の風力発電ベンチャーが、独自技術で途上国の電力不足を解決しようと動いている。強風下でも安定的に発電できる特長がある風車を開発し、台風の通り道となる島国をターゲットに実証を進めている。実際に風車を設置したフィリピンに続き、アフリカのマダガスカルでも基礎調査を実施。電化率が低い海外の離島などで電力の安定供給に貢献したい考えだ。

このベンチャー企業は、2014(平成26)年設立のチャレナジー(東京都墨田区)。風力発電に特化した開発型ベンチャーだ。

風力発電は大きなプロペラ型風車が回ることで発電する設備が一般的だが、チャレナジーが手掛けている風車にはプロペラはない。代わりに、垂直に伸びた円筒が回転することで発電する「マグナス式」と呼ばれる風車を採用している。

マグナス式風車は、野球で投手が投げるカーブと同じ原理を利用する。回転するボールは、回転方向が風の方向と同じ側では空気の流れが速くなり、反対側は遅くなる。これにより垂直方向に「マグナス力」と呼ばれる力が発生してボールの軌道が曲がる。同様に、複数の円筒を回すことでそれぞれにマグナス力が生まれ、円筒を並べた風車自体が回転する仕組みだ。

風力発電では風が強く吹くほど多くの電力を得られる。ただ、強すぎる風は破損や暴走の原因にもなるため、プロペラ型風車は台風などで風速が毎秒25メートルを超えると停止するようになっている。これに対し、チャレナジーの風車は円筒の回転をモーターによって制御し、風の強弱にかかわらず一定の速度で回転するため、風速40メートルの強風でも発電できるという。

こうした特長を生かして市場開拓に動いているのが、台風などの通り道となる島国だ。18年8月に沖縄・石垣島で技術実証機を稼働したのに続き、環境省の補助金交付を受け、21年8月には海外では初めてフィリピンのバタン島に出力10キロワットの風力発電機を設置した。

フィリピンでの実績を踏まえ、次のターゲットにしたのがインド洋で発生する熱帯低気圧「サイクロン」による強風が吹くマダガスカルだ。国際協力機構(JICA)の支援事業を活用して、21年10月から22年11月までマダガスカル北部のアンチララナ州で基礎調査を実施した。

マダガスカルは電化率が25%とアフリカでも低く、中でも調査対象地の電化率は9%ほどしかない。年間を通して風況がいいとの調査結果も得た。ただ、道路事情から全長が20メートルある出力10キロワットの設備を調査対象地まで運搬することはできないと判断。調査を踏まえ、より小型の「マイクロ風車」の開発を進めることにした。

マダガスカルではマイクロ風車の現地生産も検討していく。日本からの運搬コストを削減するとともに、現地化によって「人材育成にも貢献する」(大坂吉伸取締役)ためだ。フィリピンでも現地生産を求める声があり、今年から検討していくとしている。

マグナス式風車は、強風でも発電できること以外にも、風車が低速で回るため風切り音が発生しにくいことや、風車に鳥がぶつかる「バードストライク」が起こりにくいといった特長がある。こうした点は都市部に設置する際にメリットになるとみており、途上国以外でも市場開拓を進めていく。

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