ホタテ貝でヘルメット、バイオプラ進化 中小・ベンチャーが存在感 独自技術続々

生物を資源とするバイオマスプラスチックで中小・ベンチャー企業の存在感が高まっている。ヘルメットなどの製品は販売にも乗り出している。

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原油由来のプラスチックに比べ二酸化炭素(CO2)を削減できるバイオマス(生物資源)プラスチックで、中小・ベンチャー企業が存在感を高めている。食用に適さないコメや貝殻、間伐材など未利用のバイオマス資源を原料に、独自技術でバイオプラを生産。一部企業はバイオプラ製の最終製品の販売にも乗り出している。

甲子化学工業(大阪市東成区)はホタテ貝殻を原料にしたバイオプラ「カラスチック」を開発した。ホタテ貝殻の主成分が炭酸カルシウムであることに着目。貝殻を粉砕し、廃棄プラスチックと混ぜ合わせた。石油由来の新品のプラスチックに比べ最大36%のCO2を削減できるという。

ホタテ貝の産地で、加工の際に出る貝殻の処分に困っていたことを知り、バイオプラの素材として活用することを思い立った。貝殻は日本有数のホタテの水揚げ量を誇る北海道猿払村から提供を受けた。

カラスチックを使用したヘルメット「HOTAMET(ホタメット)」も開発し、クラウドファンディングサイト「Makuake」で先行販売したところ、目標を大きく上回る購入希望が寄せられた。5月の連休明けから出荷し、一般には6月から販売する計画だ。

バイオマスレジンホールディングス(東京都千代田区)は、食用に適さないコメを原料に使うバイオプラ「ライスレジン」の生産を拡大している。新潟県南魚沼市、熊本県水俣市に続き、昨年12月には福島県浪江町に国内3カ所目の生産工場を完成した。原発事故の影響などで休耕状態になっている浪江町内の水田もコメの栽培に活用する。

bioplastics
バイオマスプラスチック「ライスレジン」を使った商品(バイオマスレジンホールディングス提供)

ライスレジンは石油由来のプラスチック原料に、コメを最大70%まで混ぜて製造するため、その分、CO2の削減につながる。スプーンやおもちゃ、ゴミ袋など用途も拡大している。

間伐材や廃材などから、これまで活用が難しかった成分を抽出してバイオプラ「HEMIX」を開発したのが事業革新パートナーズ(川崎市幸区)だ。

HEMIXの原料は植物中に20~30%含まれるというヘミセルロースという成分。抽出や加工が難しく、廃棄されたり燃やされたりしていたが、抽出の最適条件を見いだした。微生物の働きで最終的にCO2と水に分解される生分解性を持たせることもできる。

一方、性質が異なる複数のプラ素材を積層して、化粧品や食品を入れるボトルなどの容器を成形する技術を持っているのが、平和化学工業所(千葉県市川市)だ。

平和化学工業所の畠山治昌常務。事務所にはさまざまな素材でつくったボトルが並ぶ =千葉県市川市(高橋俊一撮影)

大企業を中心に、自社製品の容器にバイオプラを採用する例も増えているが、「何でも入れることができる万能な素材はない」(畠山治昌常務)という。例えば水分を透過しやすいバイオプラであれば、それだけでは液体の保存容器には使えず、液体を通さない石油由来のプラスチックなどと重ねて使う必要がある。同社は素材の間に挟む接着剤を含め、一度に最大6種9層を積層してボトルを成形することができ、用途に応じてさまざまなバイオプラを使うことを可能にした。

政府は令和元年5月にまとめた「プラスチック資源循環戦略」で、12年までにバイオプラを約200万トン導入する計画を掲げている。日本政策金融公庫総合研究所の藤田一郎グループリーダーは中小・ベンチャー企業の技術力について「大手企業に引けを取らない」と評価。その上で、「大手がやらない小ロットでも手掛けることができ、バイオプラ普及の突破口になる可能性がある」と指摘している。

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