「食品残渣」を家畜の餌に活用 神奈川県とNTT東日本がマッチング実証実験

神奈川県の企業が食品加工工場から出る「食品残渣」を家畜の餌として活用する実験を開始。輸入飼料への依存から脱却し、飼料自給率の向上につなげる。

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神奈川県とNTT東日本が食品加工工場から出る規格外品や、使わない切れ端の「端材」といった「食品残渣(ざんさ)」を家畜の餌として活用するマッチングシステムの実証実験を開始した。円安や世界的な食料危機で飼料価格が高騰する中、大都市に近く、食品工場が多く立地する〝地の利〟を生かして県内の畜産農家を支援する。輸入飼料への依存から脱却し、飼料自給率の向上につながる。

栄養バランス管理にノウハウ必要

実証は4月下旬から約2カ月間、実施。養豚を営む厚木市の臼井農産と大豆加工食品メーカーと洋菓子メーカーが参画している。

インターネット上に構築したプラットフォームに食品メーカーが1カ月間に提供可能な食材の種類や成分、総量や引き取り方法などを登録。登録情報を確認した畜産農家が予約し、食品メーカーから受け取る。県やNTT東は参加事業者を募集しており、4農家、食品メーカー15社程度にまで拡大させる計画だ。

いつ、どれだけの量が出てくるか分からない食品残渣は、餌として利用する際には家畜の栄養バランスを管理するため、ほかの餌の配合を調整するなど農家にはノウハウが必要になる。一方、生ごみや残飯などを連想する消費者も多く、敬遠する農家もある。

「消費者が食べるものより鮮度いい」

創業60年の歴史を持つ臼井農産は20年以上前から食品残渣を利用してきた。臼井欽一社長は「利用するのは端材などで製品と全く同じ。加工工場から直接引き取るので、むしろ消費者が食べるものよりも鮮度はいい」と話す。チーズなどの乳製品を使うと精肉の味がよくなったり、カカオ豆の皮を餌に混ぜると豚舎の消臭効果が得られたりといった副次的な効果もあるという。

ウクライナ危機などで穀物価格が上昇し、為替の円安も相まって輸入飼料も高騰している。養豚業では飼料代がコストの5割以上を占め、経営を圧迫しているという。相対的に割安感が出ている食品残渣は需要が高まっており、北関東の大規模農家も県内の加工工場まで引き取りに乗り出しているという。県畜産課は「飼料高の対応策の柱に据えている。さらに参加企業を増やしたい」としている。

次世代都市型畜産のモデルケース

日本の近代養豚は江戸時代末期の開港を機に、居留する外国人からの強い要望で始まったといわれ、横浜が発祥の地とされている。その後、県内に広がった養豚業は、先の大戦後、貴重なタンパク源として復興を支えた。都市化が進んだことで、規模は縮小したものの、時代に合わせて変化してきた県内の畜産業は首都圏の人口を支える食品産業との連携で、次世代の都市型畜産のモデルケースになりそうだ。

筆者:高木克聡(産経新聞)

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