2030年までに東南アジアでの廃棄物焼却事業の展開を目指すツネイシカムテックス カギは「共生」
[SPONSORED]インタビューで、ツネイシカムテックスの海外事業担当者、伊藤正道氏は、廃棄物処理事業を地域に拡大し、持続可能な社会を構築するには、地元住民の協力が欠かせないと語る。

This post is also available in: English
広島県福山市を中心に産業廃棄物処理・リサイクル事業を展開する「ツネイシカムテックス株式会社」(広島県福山市)は、1月に神原文雄氏(45)が最高経営責任者(CEO)に就任。東南アジア・太平洋地域の事業拡大に加え、海外の環境保全に貢献していくとの方針を示した。同社はそのために、2030年までに東南アジアで廃棄物の焼却事業を実現するという大きな目標を掲げる。しかし、それは容易な道ではない。目標の達成に向けてどんな障害があり、それをどう乗り越えていくのかー。同社の執行役員で海外事業を担当する伊藤正道氏(43)に展望を聞いた。

課題山積…日本もかつて通った道
伊藤氏によると、東南アジアでは、各国政府が廃棄物の処理に投資する資金も技術もない。ゴミの分別が行われていないため、焼却事業を行う上で処理計画を立てられない状況にあるという。
さらに、埋立地でゴミを拾って生活している人たちをどう保障するかといった問題があるほか、ゴミ処理には多くの利権とマフィアなどの反社会的勢力も絡んでいる。加えて、法整備が追い付いていないため、不法投棄や管理が行き届いていない違法な埋立地にゴミを廃棄しても罰則がなく、事実上、野放しの状態にあるという。
このため、違法でも安い処理費用の埋立地が選ばれる→焼却処理費や管理維持費の採算が合わず焼却事業として成り立たない→東南アジアで焼却事業を行っている企業はあるが、安定的な利益を出すのに苦労している―という悪循環が続いている。

それでも、伊藤氏は、東南アジアの未来を見ている。「日本の近隣地域に位置する東南アジア諸国は急速に経済成長しており、ゴミが増えている。日本もかつて通った道。大変だが、持続可能な社会を作り上げ、より良い国となるためには、ゴミ問題は避けては通れない」と語った。
ツネイシカムテックスは、タイのグループ会社で排水処理・水処理プラントの設計から建設施工、メインテナンス、機器設備や薬品の販売まで手掛けるほか、マレーシアとフィリピンのグループ会社では非鉄金属やレアアースを含むE-Waste、廃プラスチックのリサイクルを実施している。今後は、処理が難しい太陽光発電パネルやリチウムイオン電池のリサイクル需要が高まるとみていて、海外のグループ会社との連携をより一層高めていく方針だ。

「父のように地域経済の発展に貢献したい」y Father'
同社の海外事業を牽引する伊藤氏は、幼少期を東南アジアで過ごした。小学校1年生から4年生まで、父親の仕事の関係でマレーシア(コタキナバル)の現地校に通った伊藤氏は、学校唯一の日本人であった。当然、言葉は通じず、非常に辛い思いもしたが、しばらくすると現地の友人たちとジャングルを駆け回って遊ぶようになった。
日常生活でも大雨が降れば停電や断水も頻繁にあるのが普通だった。「その体験があったから、海外赴任してもすぐに環境に慣れるのが得意になった」という。さらに、「父親のように海外でも地域の経済発展に貢献できるような仕事をしたい」と思うようになった。
大学卒業後に証券会社へ就職し、営業職として経験を積んだ後、退職。フィリピンとカナダへの留学を経てツネイシカムテックスに入社したのが2013年の31歳のとき。2年後の2015年からは海外事業部で、タイ、その後、フィリピンに駐在し、前出の環境事業の拡大を図りながらもアジア・太平洋地域を中心に世界を飛び回り、情報収集や各国の環境行政担当者らとのコネクションづくりにも尽力する。

剣道の持つ力
海外駐在先では、業種問わず多くの人に会えるよう、県人会や商工会、交流会、ゴルフコンペなどに積極的に参加するようにしているほか、学生時代に一度辞めてしまった剣道を35歳の時、タイで再開。剣道は、世界中の剣道家や日本人駐在員とのコネクション構築にもつながり、仕事にも役立っているという。昨年は、剣道のフィリピンチームが世界大会に初参加した際、フィリピン女子チームのコーチを1年間務め、強化練習の実施や大会開催地のイタリアにも遠征した。
海外企業をグループ化するにあたり、伊藤氏が大切にしていることは、「いきなり日本のスタイルを押し付けるのではなく、その国の違いや文化の相違を理解し、自らコミュニケーションをとってその国の人たちに受け入れてもらうことが重要だ」と語った。まずは、オフィスの内装、現場スタッフの休憩場所、トイレなどをリフォームし労働環境を改善することで、日系企業のグループに加入して良かったと実感してもらうことを取り組むようにしているという。


そのうえで、意欲があり優秀な社員へは日本の本社訪問なども企画し、自分たちがどのような企業とグループになったかを見て・実感してもらうことでモチベーションを高め、「地球環境を改善する」「リサイクル社会を創生する」といったビジョンの共有にも繋げるようにしている。
伊藤氏は最後に、「現地の人たちと共に歩むことが何よりも大切です」と強調した。

昨年、日本を訪問したフィリピン人の社員からは、伊藤氏のもとに以下のようなメールが届いた。
「約1週間の日本訪問は、実に多くの発見がありました。特に、日本の廃棄物リサイクル技術には本当に驚かされました。日本は世界で最も清潔な国の一つです。ツネイシカムテックスのゴミを効率的に資源に変えるリサイクル技術は環境を守り、改善しています。いつかフィリピンでもそうした技術へチャレンジ出来れば、〝スモーキー・マウンテン〟と呼ばれる私たちのゴミの山を完全になくすことができると確信しました。改めて環境保全を担う企業のメンバーになれたことを誇りに思います。」
問題はある。だが、熱意は国境を越えて人の心を動かす。変化は確実に始まっている。
筆者: 内藤泰朗(JAPAN Forward 編集長)
関連記事:
- 脱炭素へ電力など3分野で政策協調、協力覚書を官民で計68件 AZEC閣僚会議で合意
- アナログからクールな産業廃棄物業界へ 女性が働きやすい職場を目指し、年間900時間の作業時間を削減
- ゴミは宝の山 ここほれワンワン:産業廃棄物業リサイクル、トップランナー ツネイシカムテックス
This post is also available in: English