大阪・関西万博で「希少疾患・難病」を楽しく考えよう!イベント実施

日本の「難病の日」の5月23日、大阪・関西万博で楽しく難病問題について考えてもらおうと啓発イベントが開催された。患者や家族、支援者らが出演、秋篠宮妃紀子様も参加された。

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みんなで楽しく考えよう!日本の「難病の日」の5月23日、大阪・関西万博で患者当事者・支援者らが参加する世界の「RDD(Rare Disease Day」とのコラボイベントが催された。患者らが歌や踊りを披露、「一人一人が違っていい」というメッセージを発した。

「難病の日」のイベントで参加者らとご懇談される秋篠宮妃紀子さま=5月23日日午後、大阪市此花区の夢洲(川村寧撮影)

「みんな違っていていい」

「できないことがあるけれど、みんな違っていていい」ー。筋肉が衰える難病、筋ジストロフィーと闘い歌手活動を行っている小澤綾子さんが車イスに乗りながら歌声を披露した。

歌を披露する小澤さん(右)(杉浦美香撮影)

小澤さんは筋ジストロフィーと20歳で診断を受け、就職や結婚、子どもを持つことなどを一度はあきらめたが周囲の励ましなどもあり就職、結婚、そして母になることを実現していった。

小澤さんは「腕が上がりませんし、できないこともたくさんある。でも、同じ人間だよということをこの万博という場所で、知ってもらうことはとても意味があります」と話す。

自己免疫疾患の難病、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)と向き合うソプラノ歌手、坂井田真実子さんも車イス上から高らかに声を響かせた。

車イス上で声を響かせる坂井田さん(杉浦美香撮影)
笑顔の小澤さん(杉浦美香撮影)

「発症して下半身不随になりました。リハビリで歌えるまでに回復しましたが、今も刺されるように痛い。この会場には、同じ病気を患っている仲間がいます。万博でこのことを知ってもらいたい」と語った。

紀子様も、歌に合わせて得意な手話を使って歌に参加された後、患者・家族らと交流された。

日本発の難病の日とエキスポ

希少・難病性疾患とは、患者数が少なかったり、病気のメカニズムが複雑なため治療薬・診断方法の研究が少ない病気のことをいう。世界では約7000の希少疾患があり、患者数は約3.5億人いると言われている。

 

参加した患者家族(杉浦美香撮影)

I患者のコミュニティを作り、社会啓発を行うために2016年に、国連内にNGOが設立され、希少疾患の患者会が2024年5月に世界保健機関(WHO)の公認連携機関として承認された。

うるう年の2月29日が「希少な日」であることから、前日の2月28日を「世界希少・難治性疾患の日」と定め、2月の最終週に世界中で難病の日のイベントが開催されている。前回のドバイ万博(2021年10月~2022年3月)では、2月28日に欧州患者会協議会(EURORDIS)の主催で啓発イベントが開催された。大阪・関西万博では、日本の難病の日である5月28日にイベントを行うことになったという。

参加した患者家族ら(杉浦美香撮影)

主催者であるNPO法人ASrid理事長の西村由希子さんは「日本で行われる万博で難病の日のイベントは初めて。みんながキーワード。患者当事者、家族、支援者が万博に来る機会となり、来場者にもアピールすることができる。難病・希少疾患のことについて楽しく考えてもらえればうれしい」と話した。

高校生らも自分ごとしてアピール

関西の患者当事者、家族らも壇上で訴えたほか、難病の日の活動にこれまで参加してきた高校生たちが自作の劇を披露したり、率直な意見を述べた。

発表する内藤さん(杉浦美香撮影)

大阪女学院の高校3年生の一人は「パセドー病で見た目が変わり、周囲の理解が得られず、追い詰められた。今の学校に転校、手術も受けて人とのコミュニケーションもとれるようになった」と打ち明ける。「追い詰めるのではなく、自信を持つことができる社会であってほしい」と訴える。

灘高校3年の内藤隆司ハドソンさんは、脳波を使って感情の起伏をAIで判断する研究をしていることを発表した。内藤さんは「スカーフを頭にしていますが、私自身、原因が特定できない脱毛症で髪の毛もまつげもない。研究を深め、難病に苦しむ患者のために実用化していきたい」と夢を語った。

参加した高校生(杉浦美香撮影)

未来社会を映し出すという万博という国際イベントで、当事者の患者・家族と高校生らが交流、難病・希少疾患の解決に向けた「明日」を語る場にもなっていた。

パネルディスカッションに参加した高校生(杉浦美香撮影)

筆者:杉浦美香(Japan 2 Earth編集長)

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