「ジェンダーレスコスメ」 性差解消は「顔」から!? 化粧品も男女共用
化粧品の男女共用をうたうブランドが続々誕生。性差解消は「顔」から。
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「男なんだから」とか「女なんだから」などと性別で人を型にはめる「ジェンダー」(社会的に作られる性差)をなくそう! そんな機運を物語る「ジェンダーレスコスメ」に注目だ。男性の美意識向上を背景に、化粧品の男女共用をうたうブランドが続々誕生。男女で肌質が違うのでは? それもジェンダーの刷り込みらしい。肌質の差は男女差よりも外的要因が大きいという。男だから肌も強い…わけはない。男性の肌の手入れや眉・肌化粧が一般化し、口紅やマスカラにも及ぶ。性差解消は「顔」から進んでいる。
トレンドは中性的な韓国風
白い肌に唇の血色感が印象的。姉と弟で活動するタレント「よしミチ」プロデュース化粧品「パース」のポップに新時代を感じる。
5月に全国146店で「コスメフェスティバル」を開催したロフトの展示会を訪れた。昨年までは同時期に男性コスメ催事を展開していたが、今春は男女統合で集客も広がった。
ロフト全店の5月1~9日の化粧品関連の売り上げは前年同期比の1・7倍に伸び、特に男性のメーク用品の売り上げが2倍と好調だ。「性別にとらわれたくない意識が浸透。化粧品も個人の悩みやニーズに合わせて自由に選んでほしい。消費者の方が先を行っているようで、男性化粧品を愛用する女性や、女性の口コミを参考にコスメを購入する男性もいます」とロフト広報室の高橋祐衣さん。
参加88ブランド中、29がジェンダーレスをうたう。
昨年10月発売の「スオルム」は、眉毛メークとニキビ跡やシミを隠すコンシーラが主力商品。展開するアイハック、の富田真人CEO(最高経営責任者)はZ世代の25歳だ。
「今の若者は中性的な雰囲気を好み、メークをナチュラルにしたい女性にも好評です。陰影で涙袋を作ったり、目元を引き締める〆色を入れると、流行の韓国っぽい顔になりますよ。男女カップルで楽しむ、シェアードコスメを広げてゆきたい」
老舗化粧品「伊勢半」グループの「シアーズ」では、男性スタッフのマスカラが目を引いた。「くすんだ色をそろえている。黒よりもさりげなく、抜け感を求める男女にお勧め」
ミドリムシの健康食品で有名なユーグレナからも、ジェンダーレスコスメ「ラビタ」が誕生した。
男女別よりも単純にターゲットが倍増する。企業側のジェンダーレス商品への期待感は大きいようだ。
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ところで、男女で同じ化粧品を使うことに問題はないのか?
「肌は人間の体と外界をつなぐ組織。男女差など生まれ持った違いよりも、外からの影響で変わっていく要素が大きい。男性は、夏場も日焼け止めを塗らずに光老化が進んでいたり、保湿習慣がないために角質が荒れたりしている人が目立っていたが、近ごろはスキンケアが定着し男女の肌質の差は小さくなっている」
渋谷スクランブル皮膚科(東京都渋谷区)の下方征(ただし)院長が指摘した。
ジェンダーバイアスで不利益を被るのは女性側という視点で語られがちだが、美容面では男性側のスキンケアを軽視させていた。
クリニックを訪れる患者の悩み上位は、1位「ニキビ」、2位「ニキビ跡」、3位「毛穴が目立つ」、4位「皮脂の分泌が多い」と男女差はなく、男性特有の悩みは5位の「濃いひげを薄くしたい」。シミやくすみを治療する男性も増えており、「男性も女性同様に、肌に清潔感や透明感を求めている」と下方院長。
男性の美肌の基本は、「ひげそり前後のケアをしっかりすること。その際は、低刺激の化粧品を選ぶことが肝心」。従来型の男性化粧品には、メントールやアルコール濃度が高い〝爽快な使用感〟で肌を刺激するローションも見られるため、男女共用の化粧品はむしろお勧めだそう。
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「プーチンの戦争」に世界が心を痛めている今。征服欲を想起させる男らしさの誇示、マッチョイズムの古臭さにゲンナリしている。ますます、ジェンダーレス志向が強まるのでは?
筆者:重松明子(産経新聞)
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