【がんばろうVietnam!】公害を凌いだ日本技術の挑戦
日本の技術がベトナムの公害問題解決に貢献できる可能性を探るハノイ在住の日本人ビジネスマン。
This post is also available in: English
澱んだ空気に沈むハノイ
「10年前に比べれば、さぞハノイも様変わりしたでしょう?」
お客様から良く言われるのですが、ずっとハノイにいるので劇的な変化にピンと来ません。
しかし目を閉じて思い返すと・・・
そういえば10年前には信号機がなく、大きな四つ角では交通警察官が笛を吹いて誘導していました。
10年前は犬の糞だけ気をつけて歩いていればよかったのが、いつの間にか歩道もバイクに飲み込まれる朝の通勤風景が当たり前になってきました。
内陸のハノイは盆地ですので空気が澱みます。また中国と国境を接する立地のせいもあってかPM2.5の数値が高い。
駐在員の奥様のスマホにはほぼ100%、測定アプリがインストールされていますが、ハノイは日本と違い、危険マークが常に立っています。
「薄いガス室」に入っている感じ。
これは私が小学生の時、光化学スモッグ対策で、運動場の朝礼台に「警報フラッグ」が立つと体育中止になったあの状態が、今のハノイなのかもしれません。
ベトナムのハノイで10年間
ベトナムの首都ハノイで2011年より、不動産仲介会社を営んでおります、大和コーポレート株式会社の田口と申します。
お客様のハノイ生活全てをサポートしたいという思いから屋号を「ハノイリビング」として、今年で11年目を迎えます。
私が初めてベトナムの空気に触れた10年前の衝撃は、今でも鮮明に覚えています。
ノイバイ空港に降り立った瞬間、むせ返る湿度と吹き上がる重たい熱風に「大変なところに来たな」そう実感しました。
「すみません、今のアパートを途中解約してタイ湖沿岸に移りたいんです。息切れが激しく熟睡できません」
真っ青な顔色で当社に来られたのは、駐在歴が私と同じくらいの奥様でした。
空気の悪さは赴任当初から気が付いていましたし、総合病院の日本人医師からも季節的に喘息気味の来院者が押し寄せるのが普通であることは聞いていましたが、生で苦しんでいるお客様を見るのは初めてでした。
目の前に湖が広がる湖畔のアパートに移ってから、症状は治まりなんとか落ち着いていただけました。
大気汚染より外資誘導
その奥様が住まわれていたハノイの日本人街「Kim Maエリア」は、冒頭のような交通渋滞が年々酷くなっており、その為か排ガス濃度の測定結果をリアルタイムに表示する巨大電光掲示板が大きな交差点に長らく立っていました。
空気の悪さを象徴する鉄塔でしたが、地下鉄工事の為に知らぬ間に取り壊されています。
「裾野(すその)をもっと連れて来てくれないか」
ベトナム経済人の間で「すその」という言葉は経済発展を押し進めるキーワードになっています。
外資の力を取り入れ、一足飛びの経済力の引き上げを目指すのに、首都ハノイの空が汚れている情報など邪魔になるだけ、必要ないのです。
空気の悪さは空気清浄機が、「飲めない汚れた水道水」には浄水器で対応しています。
しかし、対応できない待ったなしの問題にベトナムは直面しています。例えば経済成長と共に必ず出てくるゴミ(廃棄物)処理問題などです。
「もったいない」精神に基づく循環型社会へ
「廃棄物のリサイクルと管理手法を日本の経験から学べ」
2021年12月15日、ベトナム国天然資源環境省と日本の環境省が共催した「循環経済に向けた廃棄物管理セミナー」にはベトナムの行政機関、地方政府及び各研究所から200名以上の実務担当者が参加しました。
今のベトナムには、長年の稼働実績に基づく技術支援が不可欠で、我々日本に向けられる目線は熱い。
「戦争で出遅れたベトナムを我々の技術力で支え、パートナーシップを維持していかないといけない」
前の深田博史駐ベトナム日本国大使が財界人全員の前で挨拶された年頭の言葉の通り、日本の技術がベトナムの様々な分野で芽吹き始めています。
10年間、仕事をさせていただいているこのベトナムのために。
日本が歩んだ公害という負の歴史を、ベトナムに繰り返してもらいたくない。
この国の焦眉の環境問題に着目し、日本の技術が結集し立ち向かい躍動する様を、微力ながらお伝えしていきたいと思います。
This post is also available in: English