世界有数の繁殖地で「サシバ」保全条例、開発や捕獲規制でタカの一種保護 栃木県市貝町
タカの一種「サシバ」の飛来、営巣地として知られる栃木県市貝町で、営巣地の自然環境や生態系を守ろうと町が条例を制定し、4月から施行された。
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タカの一種「サシバ」の飛来、営巣地として知られる栃木県市貝町で、営巣地の自然環境や生態系を守ろうと町が条例を制定し、4月から施行された。営巣地である里山の環境保全と希少野生動植物の保護を合わせた条例は県内の市町では初めて。条例には実効性を保つため罰則も設けている。町が条例を制定し、里山の保全に乗り出した訳は-。
〝サシバの里〟掲げ町づくり
県東部に位置し、人口約1万1千人の市貝町。水田や広陵地が広がる町北部を中心に春から夏にかけて渡り鳥のサシバが飛来し、営巣。サシバの生息密度は全国一を誇り、営巣する里山の自然の豊かさが注目されている。
そんなサシバを通して自然が豊かな町の魅力をPRしようと、同町では〝サシバの里〟を掲げ、町づくりを進めている。令和元年には同町に、渡り鳥の中継地である沖縄・宮古島市や台湾、越冬地のフィリピンなどの関係者が一堂に会し、第1回国際サシバサミットが開催され、市貝宣言を発表した。
農地、山林の荒廃
しかし、サシバの数は年々、減少。NPO法人オオタカ保護基金の調査では町内に営巣するサシバの数は平成10年代前半に比べ、3分の2ほど減っているという。
その要因として挙げられているのが、サシバが餌場としている農地や山林などの荒廃。営巣地となっている谷地にある田んぼ(谷津田)では機械化が難しいうえ、高齢化も進み耕作放棄地も増え始めている。さらに太陽光発電システムの設置などの開発も進み、里山での生物多様性の保全や良好な景観形成などの機能が失われつつあるという。
そこで里山の自然を将来にわたって守ろうと町が打ち出したのが「町サシバの里保全創造条例」の制定だった。
条例は保全地域の指定▽里地里山の利用促進▽希少野生動植物の保護-で構成。里山の保全では特別重要里地里山保全地域と重要里地里山保全地域を指定し、特別地域での開発行為は一律禁止(民有地の場合、町が所有権などを取得)。重要地域は許可制となる。希少野生動植物の保護では町のレッドリストから動植物を指定。捕獲などを規制するほか、監視員による巡回も行う。
指定は今秋を目安に行う予定で、特別地域には「多田羅沼湿地」が、希少野生動植物にはサシバなど数種類が指定される見通しだ。
違反には懲役も
実効性を保つための罰則は周知期間を経て10月から施行。無許可で特別希少野生動植物を捕獲したり、偽りや不正に重要保全地域の開発許可を取得した場合など1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる。
条例は2年前に議会への上程が検討されたが、特別重要保全地域の指定が財産権の侵害に当たるなどの指摘を受け見送った経緯も。今年3月に再び議会に提案し、可決された。
入野正明町長は「サシバを頂点とした生命の宝庫である谷津田の生態系を再生し承継するためには、地元住民の熱意と誇りに基づいた都市との交流事業を起業しなければならない。特産品をつくり、地域ブランド化を図り、外貨と関係人口を呼び込みたい」と抱負を語った。
サシバ タカ目タカ科サシバ属に分類される鳥。タカの仲間としては中型。4月ごろ夏鳥として本州、四国、九州に渡来。秋には南西諸島を経由して東南アジアなどで冬を越す。平地の林と農耕地の入り交じった環境に生息。里山の代表種とされる。
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