廃棄物は未来の資源 三友プラントサービスの挑戦

廃棄するはずだったコーヒーの豆かすを発酵させて牛の飼料に転換。この飼料を与えた乳牛のミルクを利用する、「サーキュラーエコノミー」のループをつなげているのが「三友プラントサービス」だ。

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廃棄するはずだったコーヒーの豆かすを発酵させて牛の飼料に転換。この飼料を与えた乳牛のミルクを利用する、「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」のループをつなげているのが「三友プラントサービス」(神奈川県相模原市)だ。「廃棄物は未来の資源」と位置づけ、処理が難しい産業廃棄物に対応する技術力で業界を引っ張っている。小松和史代表取締役社長に展望を聞いた。

先々代の事業だったガソリンスタンドと建材卸業の経営を引き継いだ創業者の小松燿(こまつあきら)氏が「三友プラントサービス」(旧小松商事部)を設立したのは1948(昭和23)年6月のことだ。ガソリンスタンド経営で培った油の知見を活かし、廃油を集め、それまでマキで湯を沸かしていた銭湯に販売した。それが同社の産業廃棄物処理業を営むきっかけとなる。相模原市に1978年、最初の中間処理施設(現・第2工場)を作り、横浜、川崎、千葉などと全国7か所に拡大、北海道で自社の最終処分場を確保し、収集から運搬、分析、中間処理、最終処分、リサイクルまでの一貫体制を作り上げた。

海を守りたいが原点だった

――現在にいたる経緯と経営理念を教えてください。

産業廃棄物は排出事業者が責任を負うことになる廃棄物処理法(1970年制定)ができるまで、廃棄物は単純に海に捨てればいいという時代でした。それをこれでよいのか、と考えたのが父(小松燿)でした。父は魚釣りが好きで海が大好きだったため、廃棄物処理法ができる前に、陸上に処理施設を作りました。それが今の事業のスタートになります。

社会にとって何がいいかを考え、技術を開発する。難しいことに挑戦するのが我々の会社の基本になります。

「廃棄物は未来の資源」とする小松社長(杉浦美香撮影)

最終処分場は将来の保管庫

――自社の最終処分場があり、廃棄物の収集運搬許可を全都道府県でとり、専用ふ頭も確保、海上輸送に対応されています。独自の鉄製コンテナで廃棄物を管理し、追跡できるトレーサビリティも業界に先駆けて取り入れられました。

北海道の中間処理施設と最終処分場は、北海道・石狩に新設する大規模工業団地の廃棄物処理を受けて欲しいと道から頼まれたところから話が始まりました。北海道で遠いことからコスト、環境に配慮するために海上輸送に踏み切りました。実現まで時間はかかりましたが、船と専用の埠頭も確保しました。発想の転換です。

中間処理場には、廃棄物が次々と運ばれてくる(三友プラントサービス提供)

この業界は数々の企業が関与します。それを、わが社は回収から処理、リサイクルまで1社が責任を持ってできます。分析、処理の技術力向上にも努め、やっかいな廃棄物にも対応でき、トレーサビリティがしっかりしていて守秘義務も守れるということで長期にわたって顧客の信頼を得てきています。

私は最終処分場の「最終」をなくしたいと思っています。最終処分場は将来の資源を管理している保管庫です。数100年後に、廃棄物と思っていたものが資源になるかもしれないのです。

7年がかりでコーヒーの豆かすを乳牛の飼料に

難しいことに挑戦する、その真骨頂が大手コーヒーチェーン店「スターバックス」のコーヒー豆かすを回収して乳酸発酵させ、乳牛のための飼料に転用、餌を食べた牛のミルクを店舗で使用する「SAIKAI PROJECT」だろう。同社はこのために、廃棄物処理法に基づく規制を緩和してもらう特例措置「食品リサイクルループ」の認定を2014年、初めて取得、構想から7年がかりで実現にこぎつけた。

――スターバックスとのプロジェクトのきっかけとご苦労を教えてください。

食品廃棄物の有効活用を規定した食品リサイクル法(2000年に制定、07年改正)ができ、スターバックスの関係者から相談されたのがきっかけです。プロジェクトのデザイン自体は簡単でしたが、実践するには大きなハードルがありました。一番、時間がかかったのは豆かすのエサを乳牛に与えてもらうことでした。コストや品質の安定化、「食品リサイクルループ」の認定にも、時間がかかりましたが、多くの前向きな関係者の尽力により事業のスタートが切れました。このことで学んだことは、皆さんが参加していただくことでリサイクルは成立するということでした。

――企業としての経営効率や利益を考えれば、プロジェクトの断念も選択肢にあったのではないですか?

数年で社長が変わる企業であれば、ここまでやらなかったかもしれません。全体の売り上げからみればこの事業が占める割合はわずかです。オーナー会社だからこそ、できたのだと思います。焦っていいことはありません。

三友プラントサービスのコーヒー豆かすの資源循環の取り組み

うれしい副産物もありました。コーヒー豆かすは抗酸化物質であるポリフェノールが大量に含まれているため、豆かす飼料を与えた牛の乳房炎が減りました。人間でいうとサプリメントのような役割をしていたのです。この効果は麻布大学の研究でも実証されました。

わが社にとってもスターバックスというブランド力を持つ企業とのプロジェクトで会社のイメージアップにつながり、数字ではかれないメリットがありました。

2021年には、千葉県東金市と包括連携協定を結び、同市の「道の駅」のスターバックス誘致も実現、循環型社会と地域経済活性化にも取り組んでいる。スタバだけではなく、ファミリーレストランチェーン「デニーズ」の横浜市内で発生するコーヒー豆かすも乳牛の餌にして活用、デニーズはこのミルクを使った新メニューを提供している。

【プロフィール】小松和史(こまつ・かずふみ) 1953年、静岡県熱海市出身。武蔵工業大学工学部卒業。関西ペイントを経て1978年3月に、同社に入社。1980年、取締役。1986年、取締役副社長。1992年6月から現職。

続いて、インタビューのVOL.2を読む。

(三友プラントサービスは、Japan 2 Earthのロゴ・パートナーです。)

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