日立造船マリンエンジン 「グリーンメタノール」燃料船で脱炭素に貢献

日立造船マリンエンジンでは、重油を燃料とするエンジンを「グリーンメタノール」用に改造する技術の開発に着手している。

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造船業界も温室効果ガスの削減が急務となっている。各社は従来の重油から液化天然ガス(LNG)やメタノール、アンモニア、水素など新燃料への転換に取り組む。特に舶用エンジンの燃料転換が脱炭素化の重要な鍵を握る。

日立造船の子会社、日立造船マリンエンジン(熊本県長洲町)では、ドイツの産業用エンジン大手、マンエナジーソリューションズと共同で重油を燃料とするエンジンを「グリーンメタノール」用に改造する技術の開発に着手している。同時にメタノール用エンジンの自社生産も目指す。

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日立造船マリンエンジンの熊本県長洲町にある有明工場(同社提供)

改造と生産の両技術の開発を進めるため、既にマン社からメタノール用試験エンジンを受注しており、9月から11月まで熊本・有明工場で陸上試験による技術検証を実施する。

グリーンメタノールの原料は、バイオマス燃焼で発生した二酸化炭素(CO2)や、再生可能エネルギー由来の水素など。製造時にCO2を回収する形になることから、温室効果ガスの排出量は実質ゼロとなる。液化時に断熱や圧力をかけるLNGよりも手間がかからず、次世代の船舶燃料として期待されている。

しかも、既存船のエンジン改造はグリーンメタノール用の噴射機や配管を追加し、船舶への供給設備とタンクの取り付けだけで済むため、工期やコストを大幅に抑えられる。国際海事機関(IMO)は2050(令和32)年頃に船舶から排出される温室効果ガスを実質ゼロにする目標を掲げており、既存船の改造需要は高まるとみられる。このため、日立造船マリンとマン社は24年度にも改造技術を確立させる。自社生産は26年度以降の予定だ。

日立造船マリンの山口実浩社長は「差別化できる技術の開発を強化し、脱炭素化に貢献したい」と話している。

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