リチウムイオン電池 この便利なツールを安全に使い続けるために
あらゆる電子機器に採用され、便利なリチウムイオン電池だが、回収時の火災要因にもなっている。問題解決に向け、何をなすべきなのか。Japan 2 Earthの顧問が物申す。
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「NEDO Challenge. Li-ion Battery 2025/発火を防ぎ、都市鉱山を目指せ!」という懸賞金活用型プロジェクトの最終審査会が1月22日、東京・神田で行われた。これは、リチウムイオン蓄電池(LIB)が回収物に混入することで引き起こされる廃棄物処理・リサイクル現場等での火災・事故等の課題に対し、処理工程における安全性を高めつつ作業の円滑化に資する取り組みに対して懸賞金を供するコンテストである。
コンテストは、テーマ1がLIBの検出装置、テーマ2がLIBの発火危険性の回避・無効化装置で行われた。Japan 2 Earth(J2E)のパートナーである大谷清運はテーマ1に応募、結果は3位入賞だった。決勝に残ったチームは機械・電気・計測の専門会社や国の研究機関や大学であり、廃棄物の一中間処理業者である大谷清運としてはなかなかの健闘ぶりだったと自負している。
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「意義あること」を
大谷清運が開発に着手したきっかけは二木玲子社長の言葉だった。私が顧問として働き始めた2021年の5月15日、社長から前年の同じ日に同社の第2工場でLIBが原因となる火災があったことを聞かされた。
「近隣住民の方から『大谷さん、次はないからね』と言われた。それから関係省庁に訴えているが、解決できずにいる。何とかしたい」(二木社長)。
「新しいこと、面白いこと、意義のあること」を仕事の流儀にしてきた私の心が動いた。「自分たちで検知器を作ろう」と進言。奇しくも5月15日は私の誕生日であったことも何かの縁に感じた。二木社長はじめ取締役全員が「近所の方々を守る」という思いで、社としても初の技術開発に資金を出すことを決定した。
それから2年。「思い」に賛同し協力してくれた会社とともにX線画像とAIを組み合わせることでLIBを検知できることを立証、装置の概要が決まった。補助金の交付も受け、事業化を推進、昨年3月にようやく装置を完成、「OSLiBソーター」と名付けた。
装置はAI搭載型による学習機能で導入後も検知精度の向上が図れる。検出物を使用者の希望にあわせ変更でき、カスタマイズも容易で、LIBやその内蔵品だけでなく、基板などの希少な「都市鉱山」と言われる資源も回収でき、そこが評価された。
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LIBは1991年に日本で商品化された。今ではパソコンやスマホ、ワイヤレスイヤホンなどいろいろな電子製品に使われ、日常生活になくてはならない。この技術を開発した吉野彰さんは2019年にノーベル化学賞を受賞した。
問題多い原料生産国
しかし、その一方で課題もある。一つは、回収ルートが定まらず、リサイクル技術も十分でないことだ。プラスチックごみや粗大ごみに混入して捨てられ、収集するパッカー車や廃棄物処理工場、リサイクル工場で火災が多発している。東京都の中央防波堤処理施設の粗大ごみ破砕処理場で2023年11月、LIBが原因の火災が発生、長期間ごみの回収が滞った。最近では茨城県守谷市のごみ処理設備の火災が記憶に新しい。東京消防庁によると、2024年1月~6月までの間に、LIB内蔵製品から出火した火災は107件も起きた。
もう一つの課題は、LIBの原料となるリチウム、コバルト、ニッケルなどの資源問題である。LIBの生産に欠かせないコバルトの主たる生産国であるコンゴ民主共和国は鉱物紛争や児童労働問題を抱えている。国内で使用されたLIB製品の海外流出を止め、国内で再資源化のサプライチェーンを構築することが重要になっている。
先日、吉野さんとともにLIBの商品開発をしていた研究者と話す機会があった。商品化するうえで火災対策や安全基準も作成し、満を持して発売したことを明かし、LIB原因の火災が多発している状況に大変心を痛めていることを話してくださった。
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再資源化への道
LIBの市場は拡大している。しかし、日本発の発明なのにほとんどが海外製だ。製造者が日本で作った安全基準をどこまで守っているかがはなはだ疑問だ。実際、火災を起こす大半は海外の安価な製品が多い。
この便利なLIB製品を安全・安心して使うためには国や自治体、製造者、消費者、そして資源循環に携わる者がLIBを使用している製品の表示や回収ルートの明確化し、消費者への周知、リサイクル意識の覚醒を促し、再利用、再資源化の道を作り上げる必要がある。NEDOの今回のこの企画が社会問題解決の起爆剤となることを願うばかりである。
著者:櫻井雅昭(大谷清運顧問、Japan 2 Earth顧問)
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