少量の水で汚れ分解する洗剤…つけおき除菌、災害時の洗濯も普段使いでもOK エシカルジャパン

災害に備える上で日常と非日常を分けない考え方が注目されている。水量が少なくても洗える洗剤を「エシカルジャパン」が開発、汚れを「洗う」のではなく「分解する」のだという。

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日常と非日常を分けない「フェーズフリー」の考え方が、災害に備える上で注目されている。被災生活では水や食料、トイレの確保が問題視されるが、見落とされがちなのが洗濯だ。そこで水量が少なくても洗える洗剤を「Ethical Japan」(エシカルジャパン、名古屋市)が開発した。汚れを「洗う」のではなく「分解する」のだという。

同社の多機能洗浄剤は1回当たり20グラムをバケツ1杯分(約5リットル)の水に混ぜて衣類をつけおきするだけで洗浄できる。水量は洗濯機で通常使用する10分の1程度で済む。

秘密は、洗剤に含まれる過炭酸ナトリウムと酵素。過炭酸ナトリウムから生じる酸素が酵素とともに、汚れを分解するため、界面活性剤で油を浮かして落とす従来の洗剤と異なり、洗濯機で、もみ洗いをする必要がない。衣類にぬめりが付かないため、すすぎ洗いもほぼ不要だという。

メリットは他にもある。肌に優しく、哺乳瓶などのベビー用品にも使える。環境負荷が低く、そのまま流しても問題ない。界面活性剤は魚のエラに付着して呼吸困難を引き起こすとされ、公害の原因にもなる。

普段使いできるのは、通常、洗濯できないものを除菌、脱臭、漂白できるから。洗濯機に入れられない、ぬいぐるみなどをつけおきで除菌でき、水溶液を布などに染み込ませて拭けば、剣道の防具やチャイルドシートもきれいになる。消防機関では防火服への活用も検討されているという。

昨年12月に同社が行ったインターネット調査では、能登半島地震や熊本地震、東日本大震災の被災地の住民計約1千人のうち、「災害時に洗濯できなくなる不安があるか」との問いに、「とてもある」と「ややある」答えた人は計74・2%にのぼった。長期間断水した被災地では洗濯ニーズが高まる傾向がある。

一方、主成分の酵素は界面活性剤より単価が高い。洗剤には界面活性剤が必要という常識を打ち破った代償ともいえるが、それでも同社の多機能洗浄剤は1週間分7袋1パックで税込み1485円(別途送料185円)。同社サイトで通信販売している。担当者は「普段使いして災害に備えてほしい」と話した。

エシカルジャパン社が開発した酵素で汚れを分解する洗浄剤。奥の左側コップが洗浄後の液体で、右側の従来品と比べると液体が透明に見える=5月、名古屋市(市岡豊大撮影)

「災害関連死リスク減らしたい」

エシカルジャパン岩間大徹取締役

――なぜ洗剤を開発しようと思ったのか

「昨年1月に起きた能登半島地震の被災地へボランティア活動に行った際、水が圧倒的に不足していた。避難所では冬の冷たい水で衣類を手もみ洗いする人や、それに耐えられず半日かけて市街地のコインランドリーまで行く人がいた。少量の水で使用できる洗剤が必要だと考えた」

――防災備蓄品として洗剤が普及していないのはなぜか

「備蓄品と言えば水、食料、簡易トイレが主流で洗剤の必要性はあまり認識されていない。避難所への物資提供リストにも洗剤はだいたい入っていない。ニーズはあるのに大手メーカーに認識されておらず、参入が遅れていた分野だった」

――今後の展望は?

「下着が汚れたままだと皮膚疾患や感染症を引き起こしたり、免疫力が低下したりして命を脅かすことになる。精神的なストレスもかかる。被災地でこの多機能洗浄剤を使用してもらい、清潔な衣類を身に着けることで災害関連死のリスクを少しでも減らしたい」

聞き手:市岡豊大(産経新聞)

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