佐渡生き物語 | サギの大ゲンカが勃発!?

新潟県佐渡島の生き物を紹介する映像記者、大山文兄のフォトエッセイの第14回目は国の特別天然記念物トキと共存するサギの迫力のある写真をお届けします。

暑さもひと段落。米どころの新潟県佐渡島も、黄金色になった田の稲刈りが最盛期を迎えている。水抜きが行われたため池には、豊富なエサを狙って、国の特別天然記念物のトキをはじめ、たくさんのサギが飛来している。大人しいトキと違って、エサを巡るサギのケンカは迫力がある。

■トリのパラダイスが出現

佐渡も、稲刈りの季節に突入した。日中はまだ暑さが残るが、朝晩は長袖が必要なぐらい気温が下がり、過ごしやすくなってきた。農業を手伝っている私も1日、コンバインに乗る日々が続き、撮影時間の捻出に苦労している。

その少ない時間に比較的撮影が容易なスポットがある。水を貯めるタンクの役割をするファームポンド(ため池)だ。田に水を供給する必要がなくなり、池の水抜きが行われると、ドジョウやザリガニなどトリの大好物なエサの宝庫が出現し、池はトリのパラダイスになる。待ってましたとばかりに、トキをはじめカワウなど多くのトリが飛来し、この時期限定の撮影スポットだ。そこで、トキに交ざって存在感を発揮するのがサギだ。

アオサギの首に噛みつくカワウ(©大山文兄撮影)

■「シラサギ」という名のトリはいない

白色が特徴のサギは「シラサギ」と認識されることが多いが実は、「シラサギ」という名前のサギはいない。「サギ」は総称になり、大きさから区別されるダイサギ、チュウサギ、コサギは白い。見分けがつきにくいがダイサギとチュウサギはクチバシの色が夏は黒く、冬は黄色だ。コサギは足の指が黄色く、クチバシも年中黒い。飾り羽も見分けるのに有効で、コサギは白いサギでは唯一、夏に長い冠羽が出ている。

頭から尾まで約90センチにもなるダイサギと並んで大きいのがアオサギだが色は白ではなく、灰色。翼の風切羽が青色がかった黒色をしている。

アオサギ(左)に追われるダイサギ(©大山文兄撮影)

■ トキとの共存

水が抜かれたファームポンドの泥にクチバシを突っ込んでエサを探すトキに交じり、サギもエサを探している。エサの取り合いになり、ケンカが勃発するかと思いきや、トキとサギはいたって平穏だ。

トキは長いクチバシで、泥を探りながらエサを捕えるが、サギは目で見て短い真っすぐなクチバシを使って捕まえる。時には、トキが取り損ねた魚などを捕まえてパクリと抜け目ない。コサギは足をふるわして泥の中のエサを追い出すこともある。

赤い顔がトキ。右奥がアオサギ。中央がカワウ。背を見せているのがダイサギ。平穏にエサを探している (©大山文兄撮影)

シラサギ(白いサギ)は縁起が良いとされ、神の鳥と言われる。しかし、エサを前にすると神の使い同士のケンカが始まり、ため池は騒々しい。ただ、約1週間でエサが取りつくされ、ため池はからからになり、トリのパラダイスは姿を消してしまう。冬に向け、静かな世界が訪れることになる。

体長約90センチのダイサギ同士のケンカは大迫力だ(©大山文兄撮影)

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大山文兄について


大山文兄(おおやま・ふみえ)産経新聞社写真報道局で新聞協会賞を2回受賞。新聞社時代に11年間にわたり、トキの野生復帰を取材。2020年に退社して佐渡島に移住、農業に従事しながら、トキをはじめとする動物の写真を撮り続けている。映像記者として佐渡の魅力を発信中。インスタグラムでフォローしてください

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