【佐渡生き物語】スカベンジャー(ゴミアサリ)とはいわさない!トビの実力を見よ!

新潟県佐渡島の生き物を紹介する映像記者、大山文兄のフォトエッセイの第15回目はこの時期だけ主役になるトビの迫力のある写真をお届けします。

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実りの秋。稲刈りで田にコンバインを入れると、風を切りながら舞い降りるのがトビだ。新潟県佐渡は、国の特別天然記念物、トキが野生で生息する日本では唯一の場所だ。私はトキを撮影するために東京から佐渡に移住した。通常の被写体はトキだが、トビの迫力に思わず、カメラを向けた。

しっかりと足でバッタをとらえたトビ(大山文兄撮影)

見事な飛行

今年は9月に雨が多く、米の収穫時期が遅れてしまった。雨で稲が倒れてしまい、コンバインで刈るのも通常の3倍近い時間がかかっている。私は今年から初めてコンバインに乗り稲を刈ることになり、当初は四苦八苦したが、コツをつかむと楽しい。そこで驚かされたことがある。

シュ!

稲刈り作業中に、風を切って私の真横をかすって急降下するのがトビだ。コンバインの音に驚いてバッタやカエル、ネズミが飛び出してくるのを狙い、トビが目前で獲物を捕獲した。空中でエサをつかむ技は見事なものだ。

コンバインの横を並行して飛ぶトビ(大山文兄撮影)

一段下に見られているトビ

トビは、全長約60センチ。タカ科に属し、トンビとも呼ばれる。翼を広げると160センチにもなる。「ピーヒョロロロ」という高い声で鳴き、日本全国で見られる馴染みの鳥だ。雑食性で死骸やゴミなどをあさったりすることから、掃除屋などと呼ばれている。ことわざも「トンビに油揚げをさらわれる」(大切な物を不意に横取りされること)といったり、「トビがタカを生む」(平凡な親から人並優れた子どもができること)など、一段下に見られがちだが、立派なハンターだ。飛び出してきた小さな虫も、急降下して見事にクチバシや鋭い爪がついた足でとらえる。

鋭い爪で、エサの虫と一緒に稲もつかんでたトビ。米が飛び散った(大山文兄撮影)

トキとも共存 

刈り取られた田は、鳥たちの豊富なエサ場と化す。コンバインを操作する人は何もしてこないと知っているため、トビはコンバインを全く恐れない。おかげで、トビのハンティングを間近で見ることができた。虫と一緒につかんだ稲も器用に落とす。私の頭上に虫が止まったのか、トビに帽子をとられそうになったこともあった。

刈り取られた田はトキにとっても餌場だが、臆病なトキはコンバインに近づかない。トキはコンバインが遠く離れてから、田に入り土の中のドジョウなどをクチバシや足で探って捕まえる。このため、トビとエサの奪い合いは起きない。ただ、トビ同士のエサの奪い合いはしょっちゅうだ。その迫力を間近に見られるのも、コンバインに乗る醍醐味だと感じている。

エサを取り合うトビ(大山文兄撮影)

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大山文兄(おおやま・ふみえ)産経新聞社写真報道局で新聞協会賞を2回受賞。新聞社時代に11年間にわたり、トキの野生復帰を取材。2020年に退社して佐渡島に移住、農業に従事しながら、トキをはじめとする動物の写真を撮り続けている。映像記者として佐渡の魅力を発信中。インスタグラムでフォローしてください。

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