東京電力HD 2025年度の処理水放出始める
東京電力がは2025年度の福島第1原発処理水の海洋放出を開始した。25年度では7回に分けて計5万4600トンの処理水の放出を計画している。

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東京電力ホールディングス(HD)は4月10日に12回目の原発処理水(=ALPS処理水:福島第1原子力発電所の建屋内にある放射性物質を含む水について、トリチウム以外の放射性物質を、安全基準を満たすまで浄化した水)の海洋放出を始めた。処理水の放出は2023年8月から始まり、25年3月末までに約8万6000トンを海に放出した。25年度は7回に分けて約5万4600トンの放出を計画している。
原子炉建屋内で溶融核燃料(デブリ)や、デブリに触れた水に雨水や地下水が混ざったり触れて発生する汚染水の量は、事故当時は1日あたり約500立方メートル程度発生していたが、2023年度では80立方メートルにまで低減している。
処理水の海洋放出に伴い、空になった不要な処理水タンクを順次解体し、代わりに廃炉に必要な設備を建設する。
2回目のデブリ採取が完了
また、東京電力は福島第1原発2号機で2回目となるデブリの試験的取り出しを2025年4月15日に着手し、23日に完了した。デブリとは、2011年の東日本大震災での原発事故時に冷却できなくなった核燃料が原子炉内の構造物の一部とともに溶けて固まったもの。

2024年11月に初めてデブリを試験的に取り出した。2回目は、初回よりも原子炉格納容器の中心に1〜2メートル近い場所での採取を目指した。採取にあたっては、狭い部分を通過させ、伸縮や精緻な運動が可能なテレスコ式(釣りざお式)装置を用いた。採取したデブリは、茨城県内の日本原子力研究開発機構の分析施設で詳細分析する。日本政府と東電は、2051年までの廃炉完了を目標に、デブリ全量を取り出す方針だ。

処理水の安全基準
処理水の海洋放出では、これまで放出口近海で採取した海水から最大で1リットル当たり56ベクレル(2025年3月採取の迅速測定値)のトリチウム値を検出したが、東電が設けた放出停止判断の基準値700ベクレル(発電所から3km以内)や、世界保健機関(WHO)の飲料水基準値の1万ベクレルを大きく下回る安全な値が検出されている。
中国国家原子力機構も4月7日、福島第1原発周辺で今年2月に採取した海水や海洋生物を中国の研究機関が分析したところ、トリチウムなどの放射性物質濃度に異常は確認されなかったと発表している。
処理水の海洋放出を機に中国政府が全面停止した日本産水産物については、中国側は規定に合致した日本産水産物の輸入を段階的に再開するとしている。
筆者:海藤秀満(JAPAN Forawrdマネージャー)
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