日本のフードテック投資、米国の2% ホテルや給食など利用増、官民で後押し

フードテックへの投資額が少ない日本。代替肉の利点をアピールできるか。

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植物由来の材料で作られた「代替肉」は日本でも商品化が進む。大手食品メーカーだけでなく、最近では家庭向けに力を入れる専業スタートアップ(新興企業)も登場。高級ホテルや大手ファストフードのメニューに採用されるなど、認知度も向上しており、市場が立ち上がりつつある。ただ、普及の起爆剤となるこの分野への投資の規模は海外と比べて小さく、国は活性化に向けて環境整備に乗り出している。

「動物性原料は不使用。生タイプでミンチ状のため、さまざまなレシピで使えます」

こんな触れ込みで、スタートアップのグリーンカルチャー(東京都千代田区)が7月、インターネット上で主力商品「Green Meat(グリーンミート)」の家庭向け販売を始めた。価格は1パック(220グラム)785円(税込み)。

同社は代替肉に特化し、亀田製菓や食品宅配大手のオイシックス・ラ・大地などが出資する。グリーンミートは大豆やエンドウ豆のタンパクを原料に昨年4月に外食など企業向けに投入。パレスホテル東京(同)のパスタの食材に採用された。味と質の高さに定評があり、今年1月から9月までの累計で家庭向けも合わせて10トン以上生産した。

グリーンカルチャーの家庭用代替肉「グリーンミート」(同社提供)

同社CXデザイン室の宮沢亮室長は「多くの方に興味を持っていただいている。リピーターを増やしていきたい」と自信を示す。

大手では、国内業務用チョコレートでトップの不二製油グループ本社が、大豆を使った代替肉商品を粉末や粒状タイプも含め60種類展開する。8月には新商品「プライムソイミート」を販売。大豆と油脂の加工技術を進化させて大豆くささをなくし、困難とされた「肉のような繊維感やかみ応え」と「口どけ」の両立を実現し、食感も向上させた。同社の商品は学校給食でも使われており、代替肉など大豆加工素材事業の売上高は令和4年3月期で342億円に達する。

肉のようなかみ応えと口どけを両立させた不二製油グループ本社の代替肉(同社提供)

日本ハムは海外展開も視野に入れる。代替肉を使った唐揚げなどを米国で現地の外食企業向けに来年にも販売する。同社の4年3月期の代替肉商品の売上高は約2億3000万円。これを13年3月期までに100億円に引き上げる計画で、市場が大きい米国への進出を決めた。

外食ではモスフードサービスが「テリヤキバーガー」など9種類の定番バーガーで、代替肉を使った「ソイパティ」も選べるようにした。価格は従来の食肉を使ったバーガーより20円高いが、食事制限がある人や健康志向の高い人などに対する「訴求ポイントの一つ」(担当者)と捉える。国内全店(1258店舗、9月末時点)に導入した。

「ソイパティ」の商品で最も人気がある「ソイモス野菜バーガー」(モスフードサービス提供)

取り組みは広がりをみせつつも市場の形成には課題もある。日本は先端技術を使い食材を人工的に生み出すフードテックへの投資額が米国、中国などと比べて極端に少ない。米ベンチャーキャピタル、アグファンダーなどの調査によると、日本の投資額は約700億円で、最も多い米国の約2%。人材や技術の海外流出を懸念する農林水産省は検討会を立ち上げ、400以上の企業や団体と連携した。投資を呼び込む魅力ある市場にするため、最も進む代替肉の環境面での利点を知ってもらおうと、官民挙げて目に触れ口にする機会の創出を図る考えだ。

筆者:浅上あゆみ(産経新聞)

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